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ARFGEF2の変異によって示唆されるヒト大脳皮質における神経前駆細胞の増殖および移動における小胞輸送の役割

Nature Genetics 36, 1 doi: 10.1038/ng1276

ヒトにおいて神経前駆細胞の増殖が損なわれると小頭症が引き起こされる。また、神経細胞の適切な移動が行われないと、大脳皮質の神経細胞が側脳室近くの増殖性ゾーンで停止してしまうという異常が起こる(脳室周囲異所形成、periventricular heterotopia)。本論文で我々は、小頭症および脳室周囲異所形成という症状を特徴として有する常染色体劣性形質が、20番染色体上に位置づけられ、ADPリボシル化因子グアニンヌクレオチド交換因子2(ARFGEF2)の遺伝子の変異が原因であることを示す。ノーザンブロット解析の結果、マウスArfgef2のmRNAの発現量は、胚期に神経細胞の増殖と移動が進行している期間に最も高いことがわかった。また、in situハイブリダイゼーションの結果、Arfgef2のmRNAは胚の中枢神経系(CNS)全域にわたって広く分布していることが判明した。ARFGEF2は、ブレフェルジンA(BFA)抑制性GEF2タンパク質(BIG2)という、トランスゴルジ網(TGN)からの小胞および膜の輸送に必要な分子量200 kDa以上の大きなタンパク質をコードしている。in vitroでBFAもしくは優性ネガティブなARFGEF2 cDNAによってBIG2を抑制すると、細胞の増殖が減少するのが観察され、神経細胞の増殖には細胞自律的な制御機構が備わっていることが示唆された。BIG2の抑制はまた、Eカドヘリンやβカテニンのような分子がゴルジ体から細胞表面へ運ばれ適切な位置に局在するのを妨げることがわかった。我々の発見は、ヒトの大脳皮質の発達過程において、小胞輸送が神経細胞の増殖および移動を調節する上で重要な役割を果たすものの1つであることを示すものである。

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