Press Release

Hes1 欠損マウスにおける胆道系の膵臓組織化

Nature Genetics 36, 1 doi: 10.1038/ng1273

胆道系、膵臓および肝臓、これらのすべての器官は、哺乳類においてはほとんど同時に前腸近辺から発生する。この複雑な領域におけるそれぞれの器官の独自性を決定する分子機序は知られていない。 Hes1は塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質 Hes1をコードしており、Hes1タンパク質は Neurog3 のような正の塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックス遺伝子を抑制する。Hes1の発現は、進化的に保存されたNotch経路によって制御されている。Hes1は、内胚葉性の内分泌腺の分化を全体として負に調節する因子として機能しており、Notchシグナルに欠陥があると膵臓の内分泌腺の分化が促進される。NotchリガンドをコードするJAG1に変異があると、ヒトにおいては、胆道系の発達不全を特徴とするアラギル症候群を引き起こす。このことは正常な胆管の発生においてもNotch経路が関与していることを示唆している。今回我々は、発生期間中 Hes1が肝外胆管上皮に発現していること、また Hes1欠損マウスにおいては、胆嚢が形成不全であることおよび肝外胆管が重度の形成不全であることを示す。 Hes1欠損マウスの胆管上皮においては、異所性にproendocrine(前内分泌)遺伝子 Neurog3が発現しており、内分泌および外分泌細胞が分化し、変異した胆管に腺房および膵島様の構造が形成される。したがって、胆管上皮には膵臓に分化する能力があり、Hes1は膵臓の分化プログラムを抑制することにより、おそらく、直接的に Neurog3 の転写を抑制することにより、胆管形成を支配する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度