Press Release

ウシの乳をめぐる自然選択

Nature Genetics 35, 4 doi: 10.1038/ng1263

乳糖を消化する能力の有無は遺伝的に決まっている。また、そのような消化能力を授かっていても、全員が成人に達するまで能力を維持し、栄養豊富な牛乳の恩恵を受け続けられるわけではない。ところで、ほとんどの北欧人種は、乳製品に対する依存度の高い社会で生活している。このため、北欧人種に乳糖耐性のある者の割合が高いのは、この社会において牛乳を消化できる人々が選択的に有利になることの進化的結果だと現在では考えられている。

それでは牛乳を飲む習慣は、ウシにどのような影響を与えているのだろうか?Nature Geneticsの12月号で、Albano Beja-Pereira(CNRSジョセフ・フーリエ大学)とヨーロッパ7カ国の研究者たちは、70品種のウシ20,000頭について、6種類の最も重要な乳タンパク質を調べ、それらのタンパク質をコードする遺伝子の多様性の最も大きかった地域が、乳糖耐性のある人々の割合が最も高い地域、そして新石器時代にウシの牧畜が最も盛んに行われていた地域とぴったり重なることを発見した。

Beja-Pereiraたちは、ウシと人間が、それぞれの集団の遺伝的構造に相互的に強い影響を与えてきており、牧畜が中北欧でのウシの多様化を進め、そのようなウシが同地域での畜産業の将来にとって貴重な資源となっているという結論を示している。

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