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宇宙に特別な向き?

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120106a

定説に疑問を呈する観測結果が出ている。

宇宙には中心もなければ端もない、どの方向を見ても同じ、と物理学者は考えてきた。ところが最近、この「宇宙原理」に疑問が生じている。宇宙にある特定の方向があることを示す証拠が見つかり、その数も増えつつあるためだ。

最初に見つかった最もしっかりした証拠は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測データから得られた。背景放射はいわゆる“ビッグバンの残照”で、ほかよりも高温のスポットや低温のスポットが天空上に点在している。最近、これらのスポットが当初考えられていたほどランダムに分散しているのではないことがわかった。あるパターンに沿って並んでおり、宇宙のある特別な方向を指し示しているのだ。宇宙論研究者はこれを、やや大げさに「悪魔の軸」と名付けた。

次なる兆候は、超新星の研究から得られた。超新星は星が一生を終える最期の姿で、短時間ながら銀河全体を上回る明るさで輝く。宇宙の膨張速度の分布図を作るのに使われてきた(宇宙の加速膨張の発見は2011年のノーベル物理学賞の授賞テーマ)。詳しい統計的研究によって、どの超新星も「悪魔の軸」とほぼ同じ方向に向かって、 より速く動いていることがわかった。また、銀河団が南天のある領域に向かって時速160万kmで宇宙空間を動いているという観測報告も出た。

これらはいったい何を意味するのだろうか? データに忍び込んだわずかな誤差かもしれないし、「偶然かもしれない」とミシガン大学アナーバー校(米国)の宇宙論研究者Dragan Hutererはいう。でも、ひょっとしたら「驚くべき何か」をとらえた最初の兆候なのかもしれないともいう。

宇宙の最初の膨張爆発が従来考えられていたよりも少し長く続き、そのせいで偏向が生じて、それが現在まで残っているのかもしれない。または、宇宙は大きな規模で見るとチューブのように巻き上がっていて、一方向には曲がっているが別の方向には平坦である可能性もあると、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の宇宙論研究者Glenn D. Starkmanは言う。あるいは、宇宙膨張を加速している謎の存在、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の作用が、場所によって異なるのかもしれない。

今のところデータは暫定的なものであり、科学者たちはプランク衛星による宇宙背景放射の精密観測データを待っている。その結果によって「悪魔の軸」が確認されるか、ただの幻だったかがはっきりするはずだ。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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