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宇宙線をつかまえろ

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150106b

新型観測装置の準備が進む

宇宙線は光速に近いスピードで宇宙のあらゆる方向から飛んできて地球にぶつかる。この荷電粒子は宇宙の放射の中で最も高エネルギーだが、発生源は不明だ。天体物理学者らは、高エネルギー宇宙線は遠い銀河の超大質量ブラックホールか、ビッグバンでできた粒子の崩壊から生まれたと推測している。

こうした高エネルギー宇宙線が地球大気に衝突するのは面積1km2につき100年に1回ほど。衝突は数百億個の二次的な低エネルギー粒子からなる「空気シャワー」を生じ、それが大気中の窒素分子を励起する。この結果、空気シャワーの通り道に沿って紫外線の蛍光が生じる。科学者らは空気シャワーの経路から宇宙線の飛来方向とエネルギーを割り出し、その軌跡を何百万光年もさかのぼって再構築することで、発生源を特定しようとしている。

こうした極端な事象が見られるのはまれだ。地上での観測では、検出器の真上で宇宙線が大気に衝突しないと検出できない。ピエール・オージェ観測所(アルゼンチン)は世界最大の宇宙線検出器を備え、東京都の約1.5倍の広さの地域をカバーしているが、超高エネルギー宇宙線による空気シャワーの検出は年間に20件ほどだ。

観測のチャンスを増やそうと、15カ国の科学者が10年以上前にチームを組み、国際宇宙ステーション向けの装置を設計した。この極限エネルギー宇宙線観測装置(JEM-EUSO)は日本の実験棟「きぼう」に設置される予定で、地球に向けた広角の高速ビデオカメラによって紫外線の放出を記録することになる。観測領域が広いので、より多くの空気シャワーを確認できるだろう。

同チームは当初、JEM-EUSOを2006年に打ち上げたいと考えていた。ところが、2003年のスペースシャトル・コロンビア号の事故など地球上のさまざまなトラブルによって遅れ、配備は早くて2018年になる。

それでも科学は前進する。2014年8月、同チームはヘリウム気球に観測装置の試作機を載せて38km上空の成層圏に打ち上げた。ヘリコプターに乗り込んで観測装置を下から2時間にわたって追いかけ、装置の観測視野に紫外線レーザーパルスと発光ダイオードの光を発射した。実験は成功し、超高エネルギー宇宙線による空気シャワーで生じる蛍光を模した紫外線を試作機で検出できた。2016年には、ミニEUSOというパン容器大の試作機を国際宇宙ステーションに運び、本番と同じ高度でどう機能するかを見る。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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