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小惑星に環を発見

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140603

原文:Nature (2014-03-26) | doi: 10.1038/nature.2014.14937 | Asteroids can have rings, too

Elizabeth Gibney

巨大惑星以外で環を持つ太陽系天体が初めて見つかった。

Credit: THINKSTOCK

カリクローという小惑星に環があることが、ブラジル国立天文台(リオデジャネイロ)などの観測で分かり、2014年3月26日のNatureオンライン速報版で発表された1。カリクローは、土星と天王星の間の軌道で太陽を回っている直径わずか250kmの小天体で、現時点で、環を持っていることが分かった最小の天体となった。太陽系の天体でこれまで環が発見されていたのは、巨大惑星(木星、土星、天王星、海王星)だけだった。

この発見は、環を持つ天体が、これまで考えられていたよりもありふれたものである可能性を示している。論文の主著者であるブラジル国立天文台の天文学者Felipe Braga-Ribasは、「環は偶然見つかったもので、驚きました」と振り返る。環は、天体の興味深い特徴の1つである。環の形成は惑星とその衛星が形成される過程の第一段階であることが多いからだ。

しかし、重力が小さい天体の周囲では、環が安定でいることは難しいはずだ。「天体が環を持つかどうかは、その天体の質量で決まるのだろうと私たちは考えていました。このため、カリクローのような小天体で環を発見するとは思ってもいませんでした」と彼は話す。

カリクローはケンタウルス族と呼ばれる小惑星のグループに属し、1997年に発見された。ケンタウルス族は外部太陽系の不安定な軌道にあり、このグループの天体の中には小惑星的な性質と同時に彗星的な性質を持つものもある。「ケンタウルス族の小惑星は小さく、暗く、遠くにあるので、調べるのは難しいのです」とBraga-Ribasは話す。

Braga-Ribasらの研究チームは2013年6月3日、カリクローが遠い星と地球との間を通過し、星からの光をさえぎる様子を、欧州南天天文台ラ・シヤ天文台(チリ)の口径1.5mの望遠鏡など南米の8カ所の望遠鏡で観測していて環を発見した。

カリクローが星の前を横切ったとき、星の明るさは予想どおり一時的に暗くなった。しかし、Braga-Ribasらは、カリクローが星の前を通過する前にも、通過した後にも、一時的に星の明るさがわずかに暗くなったことに気付いた。そこで研究チームは、8カ所の望遠鏡で得られた観測結果を突き合わせ、明るさの一時的減少は、2つの高密度で幅の狭い環(軌道半径391km、幅7kmと軌道半径405km、幅3km)によって引き起こされたと結論した。カリクローの環を発見した今回の観測方法は、1977年に天王星の環を見つけた方法と同じものだ。

なぜ環ができた?

Braga-Ribasによると、環の発見により、カリクローにまつわる謎が解決されたという。カリクローから届く光を分析すると、カリクローの組成は時間とともに変化するように見えることが分かっていた。「このカリクローの組成の見かけの変化は、氷でできた環を正面から見たり、細い線のように見える側面から見たりしていたと考えることでうまく説明できます」と彼は話す。

ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センター(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の惑星科学者Francesca DeMeoは、「Braga-Ribasらの結論は、とても説得力があります。今回の観測結果を環以外の要因で説明することはまず無理でしょう」と話す。

ただ、環がどのようにしてできたかは謎に包まれたままだ。Braga-Ribasらは、別の小天体がカリクローに衝突し、両方の天体から生じた破片が環を作ったのかもしれない、と提案している。この他、カリクローが自転するにつれて振り落とされた物質から環ができた、カリクローが宇宙を旅する間に彗星のように塵や氷を放出してそれらが環を形成した、など「あらゆる可能性があり得ます」とDeMeoは話す。

大きな謎は、カリクローの質量は小さいのに、どうして環は安定なのか、ということだ。もしも衝突で環ができたのなら、衝突で生じた破片がカリクローの周回軌道にとどまるためには、衝突は非常に小さな相対速度で起こらなければならなかったはずだ。「環がどのようにしてできたにしろ、数km程度の大きさの『羊飼い衛星』が存在し、環がばらばらにならないように保持しているのでしょう」とBraga-Ribasはみている。

米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)の天文学者James Bauerは、「環の組成を調べれば、環がどのようにしてできたのか、ヒントが得られるはずです」と指摘する。外部太陽系には、カリクローをはじめ数百個の小天体が存在するが、こうした小天体は今のところほとんど調べられていない。「環を持つ天体の中で、カリクローが特異な存在である可能性は低いでしょう」とBauerは話す。「外部太陽系の別の小天体に環が見つかる可能性は高いと思います。例えば、あなたがバードウオッチングを始めたばかりで、初めて1羽の鳥を見つけたとします。その鳥は、あなたの知らない鳥だったとしても、珍しい鳥ではないのが普通でしょう」。

(翻訳:新庄直樹)

参考文献

  1. Braga-Ribas, F. et al. Nature 508, 72-75 (2014).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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