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東北地方太平洋沖地震を引き起こした断層の性質が明らかに

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140203

原文:Nature (2013-12-05) | doi: 10.1038/nature.2013.14316 | Killer qualities of Japanese fault revealed

Nicola Jones

2011年の東北地方太平洋沖地震における地震規模と津波の背景に、薄くてもろい粘土層の存在があったことが、震源海域での掘削により明らかになった。

2011年3月11日の巨大地震と津波は、研究者に衝撃を与えた。彼らは、地震に関与した断層がこれほどのエネルギーを放出するとは考えていなかったからだ。このほど、地球深部探査船「ちきゅう」が世界最高記録となる深度まで掘削を行い、この断層の奇妙な地質学的特徴が明らかになった。

2013年12月6日のScience に、海洋研究開発機構(JAMSTEC;神奈川県横須賀市)らの研究チームによる、問題の断層が異常に薄くてもろいことを示した論文3報が掲載された1-3。世界各地の沖合の断層が東日本大震災に匹敵する大災害の引き金になり得るかどうかを見極める上で、極めて重要な情報といえる。

Credit: THINKSTOCK

カナダ地質調査所(ビクトリア)のKelin Wangは、「このような断層が私たちが考えているより広く存在するなら、リスクアセスメントを考え直さなければなりません」と言う。なお、Wangは今回の研究には関与していない。

東北地方太平洋沖地震は、2種類の震動から構成されていた。その1つは、震央に近い断層深部で起きた従来型の震動で、これが大地を揺るがした。もう1つは、もっと沖合の断層浅部で起きた奇妙な震動で、横方向に50mという記録破りのすべりを引き起こした。海底で起こったこの大きなすべりによって、巨大な津波が発生したと考えられている。東北地方太平洋沖地震の震源域のように海洋プレートが別のプレートの下にもぐり込んでいる場所は「沈み込み帯」と呼ばれ、沈み込み帯のプレート境界断層浅部はこれまですべりにくいとされてきた。沈み込むプレート上の軟らかい堆積物は動くにつれて摩擦力が大きくなり、さらなる滑りを阻止するからだ。それにもかかわらず、非常に大きなすべりが発生した。

その理由を解明するため、研究チームは速やかに調査掘削プロジェクトを立ち上げた。彼らは「ちきゅう」を用いて、水深約6900mの海底を約850mまで掘削し、2012年5月に断層からコアを採取し、同年7月には1つの掘削孔内に温度計を設置することに成功した。

すべりやすい粘土層

コアの採取により、2つのプレートの境界に厚さ約5mの非常に薄い粘土層があることが明らかになった1。今回の3本の論文の著者の1人、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC;米国)のEmily Brodskyは、「奇妙としか言いようがありません。このような層は厚さが何十mもあるのが一般的ですから」と言う。室内実験からは、水を多く含むこの粘土層は非常にすべりやすく、応力がある場合はさらにすべりやすいことが分かった2。すべりによって摩擦と熱が生じるとき、粘土の隙間にある水が膨張するが、周囲の不透水層に挟まれて逃げ場を失う。この水の圧力が、断層をこじ開けるジャッキの役目をしてさらにすべらせたとBrodskyは説明する。

掘削孔内に設置した温度計から、地震から1年以上経過した時点でも断層の温度が周囲より0.31℃高いことが明らかになった3。この値から、断層がすべっている間にどれだけの摩擦熱が発生したかを推定することができた。計算の結果は、厚さ5mの粘土層の摩擦力が非常に小さいことを裏付けるものであった。

「断層帯の岩石の摩擦は、ここで見られるものより6~8倍も大きいことが経験的に知られています。これは大きな差です」とBrodskyは言う。Wangも、「震動が起きている間の摩擦がこんなに小さいとは驚きです」と言う。教科書によれば、震動が起きている間の摩擦は普段より高いはずだからだ。3つの証拠(コア、室内実験、温度計)の全てが摩擦について同じ結果を示していることは心強いとBrodskyは言う。

他の断層はどうなのか

Nature 2013年1月24日号に、固着し、すべりにくいと考えられていた断層が、その抵抗に打ち勝ってすべる仕組みが提案された4。この理論は、液体の圧力が、そうした断層に巨大なすべりを引き起こし得ることも示唆していた。今回の結果は、この理論モデルと合致する。

これと同じ奇妙な地質学的特徴を持つ断層が他の地域の沖合にもあって、巨大津波を引き起こす可能性はあるのだろうか? 今回の論文の著者であるUCSCのCasey Mooreは、「その可能性はあります。海には大量の粘土があるからです」と話す。彼によれば、理論的には、アラスカ、インドネシア、南米に、これと同じような粘土層が存在している可能性があるという。ただし、いずれの地域でも十分な掘削は行われておらず、このような地層はいまだ発見されていない。

問題は、科学掘削船で掘削できる深度にある海底断層の数が片手で数えられるほどしかないことだ。「少なくとも、何を探せばよいかは分かりました」とBrodskyは言う。

(翻訳:三枝小夜子、要約:編集部)

参考文献

  1. Chester, F. M. et al. Science 342, 1208–1211 (2013).
  2. Ujiie, K. et al. Science 342, 1211–1214 (2013).
  3. Fulton, P. M. et al. Science 342, 1214–1217 (2013).
  4. Noda, H. & Lapusta, N. Nature 493, 518–521 (2013).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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