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超新星爆発直前の質量放出をとらえた

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130526

原文:Nature (2013-02-07) | doi: 10.1038/494046a | Going supernova

Alexander Heger

質量の大きな恒星が超新星爆発を起こして死ぬとき、それは非常に明るく、「宇宙の果て」からでも見ることができる。しかし、元の星がどのようなものだったかは、はっきりしないことが多い。今回、大質量星の超新星爆発の直前に起こった質量放出現象が観測され、星の生涯について知る新たな手がかりが得られた。

質量の大きな恒星が死ぬとき、激しい現象が起こる。太陽の約10倍よりも大きな質量を持って生まれた星は、超新星爆発や強力なガンマ線バーストを起こして、その生涯を終える。では、そうした大質量星は、死ぬ直前にどのような姿を見せるのか。ワイツマン科学研究所(イスラエル・レホヴォート)のE. O. Ofekらは、2010年8月に超新星爆発(SN 2010mcと呼ばれる)を起こした大質量星において、爆発のわずか40日前にアウトバースト(急激な増光現象)がみられたことをパロマー天文台(米国カリフォルニア州)の望遠鏡などを使って観測し、Nature 2013年2月7日号65ページに報告した1。このような貴重な観測は、大質量星の最期について、いろいろなことを教えてくれる。

1987年以前の天文学者たちは、大質量星は進化して赤色超巨星になり、それから爆発すると考えていた。しかし、1987年、私たちの住む銀河系(天の川銀河)に近い矮小銀河である大マゼラン雲に、超新星SN 1987Aが現れた2。これは17世紀初め以降、最も地球に近いところで起こった超新星だった。SN 1987Aは地球に十分近かったため、研究者たちはデータアーカイブを調べ、元の場所に何があったかを突き止めることができた。驚いたことに、その超新星の前駆天体は、赤色超巨星ではなく青色超巨星だった3

しかし、SN 1987Aは地球に非常に近いという点で珍しい例だった。最近では、近くの銀河に現れる超新星とその前駆天体を調べるため、大規模な観測計画が常に行われている。その結果、例えば前駆天体は、これまでの予想よりも質量が小さいものが多いことが明らかになった4。しかし、前駆天体の詳しい姿や特徴については、多くのことがわからないままだ。特に、爆発を起こす直前についてはよくわかっていない。

恒星は、その内部で起こる核融合によってエネルギーを得ている。軽い元素は、核融合でより重い元素に変わっていく5。星の一生の大部分は、水素が核融合してヘリウムに変わっていく期間だ。その後、最も質量の小さな星を除くほとんどの星では、ヘリウムが核融合して炭素や酸素に変わり、この段階が星の一生の残りの時間の大部分を占める。太陽質量の約6~7倍以上の質量で誕生した星では、核融合はさらに続き、炭素が酸素やネオンやマグネシウムに変わる。そして、誕生時の質量が太陽質量の約8~10倍より小さかった星では、やがて星の中心部でも核融合が止まり、最後は白色矮星になる。

一方、もっと質量の大きな星では、中心核がさらに高温・高密度になって核融合過程が続き、ケイ素や硫黄が作られ、最後に周期表の鉄に近い元素ができる。鉄に近い元素の原子核は最も強く結合しているので、それらが核融合してもエネルギーは得られなくなる。この「灰」が星の中心に蓄積し、その星は最後は自身の重力のためにつぶれる。そして多くの場合、超新星爆発が起こり、後に中性子星かブラックホールが残る6

しかし、最も質量の大きな星は、炭素を使い果たしたすぐ後に急速に収縮し、残りの燃料の多くをわずか数秒で燃やしてしまうことがある。この場合、残骸を残さない強力な爆発を起こすか7、星が死ぬ少し前に、超新星に似た爆発を複数回起こして球殻状に物質を放出し(脈動性の対不安定型超新星という)、その星を完全に崩壊させる可能性がある。引き続いて放出された物質の殻どうしが衝突する現象は、自然界における最も明るい現象となる場合がある8(図1)。

図1:放出された球殻状の物質の衝突
この画像は、星が死ぬ少し前に、数年の間隔で起こった2回の脈動性対不安定型超新星爆発によって、大質量星から放出された物質の2つの殻どうしの衝突のシミュレーション結果を示している11。画像に示されているのは、現象の右上の断面。衝突でできた破片(赤いこぶ状のもの)を含む殻の半径は、地球・太陽間の距離の約500倍。色は、1cm3当たり10-11~10-16グラムのガス密度を示していて、赤は最も高い密度を、暗い青は最低の密度を示している(画像は米国のミネソタ大学物理天文学部のKe-Jung Chenの厚意による)。

大質量星の燃焼の進んだ段階は独特のものだ。星は、そのエネルギーの大部分を、表面から発する観測可能な光の形ではなく、ニュートリノの形で失う。ニュートリノは高温の星の中心から逃げ、星を冷やす。その結果、こうした末期の段階は、数百万年という星の全寿命に比べれば短い期間で終わる。炭素燃焼過程は数百年続くが、ケイ素燃焼過程はわずか1週間ほどで終わるだろう。最近まで、こうした燃焼の進んだ段階を示す特徴が、星の外側から見えるようになるとは予想されていなかった。だから、進化の末期の段階で、星がどの段階にあるのかや、あとどれくらいで超新星爆発を起こすのかを知ることは不可能だった。放出されるニュートリノを測定すれば、この段階をのぞきこむ「窓」になるだろうが、それは、ベテルギウス(オリオン座にある地球から約600光年離れた星)など、地球に非常に近い大質量星であっても、現在は不可能ではないとしても、難しい9

Ofekらは今回の研究で、大質量星が超新星爆発を起こすわずか約1か月前にこの星のアウトバーストを観測し、このアウトバーストで太陽質量の約100分の1の物質が放出されたと結論した。前駆天体は、太陽質量の約50倍というかなり質量の大きな天体だったとOfekらは見積もっている。さらに、統計的な考察に基づき、この物質放出が、続いて起こった超新星爆発と因果関係があるとOfekらは主張する。それが確かめられれば、この系は、かなり質量の大きな前駆天体の生涯の末期について、「追加の情報」が得られた数少ない例となる。それは、放出された物質の組成分析や超新星そのものから得られた以外の情報という意味である。

このような物質放出は、太陽質量の20~25倍よりも大きな初期質量を持つ星が起こすことがわかっている。その極端な例が、地球に近く、非常に大質量のりゅうこつ座イータ星(地球から約8000光年)が起こしたものだ。この星は、初期には太陽質量の150倍の質量を持っていたが、わずか数年間で太陽20個分の質量を放出したとみられる10。しかし一般に、大部分の大質量星の物質放出については、それがいつ起こるのか、何が原因で起こるのか、ほとんどわかっていない。

Ofekらは、このような物質放出に関するさまざまな理論モデルの枠組みの範囲内で観測データを分析した。そして、放出物のタイミングと性質は、核融合の最終段階での流体力学的不安定性に基づくモデルで最もよく説明できると結論した11。しかし、こうした物質放出をモデル化し、そのメカニズムを解明するためには、さらなる理論的研究が必要だ。

同じくらい大質量の星だが、核融合の最終段階にはないとみられる星で観測される物質放出現象がある。それと今回のアウトバーストが、どのように関係しているかを調べるのも興味深い。いったいどうすれば、さまざまなタイプの現象を、超新星が観測される前に見分けることができるのだろうか。Ofekらの観測は、最も大質量の星たちの進化の最終段階について、従来の私たちの理解を変えてしまうかもしれない。超新星SN 1987Aが、それほど大質量ではない星の進化の最終段階について、私たちの理解を深めてくれたように、である。

(翻訳:新庄直樹)

Alexander Hegerは、オーストラリア・ビクトリア州にあるモナッシュ大学数理科学部モナッシュ宇宙物理学センターに所属。

参考文献

  1. Ofek, E. O. et al. Nature 494, 65–67 (2013).
  2. www.cbat.eps.harvard.edu/iauc/04300/04316.html
  3. West, R. M., Lauberts, A., Schuster, H.-E. & Jorgensen, H. E. Astron. Astrophys. 177, L1–L3 (1987).
  4. Smartt, S. J. Annu. Rev. Astron. Astrophys. 47, 63–106 (2009).
  5. Woosley, S. E., Heger, A. & Weaver, T. A. Rev. Mod. Phys. 74, 1015–1071 (2002).
  6. Heger, A., Fryer, C. L., Woosley, S. E., Langer, N. & Hartmann, D. H. Astrophys. J. 591, 288–300 (2003).
  7. Heger, A. & Woosley, S. E. Astrophys. J. 567, 532–543 (2002).
  8. Woosley, S. E., Blinnikov, S. & Heger, A. Nature 450, 390–392 (2007).
  9. Odrzywolek, A., Misiaszek, M. & Kutschera, M. Nucl. Phys. B Proc. Suppl. 221, 380 (2011).
  10. Davidson, K. & Humphreys, R. M. (eds) Eta Carinae and the Supernova Impostors (Springer, 2012).
  11. Quataert, E. & Shiode, J. Mon. Not. R. Astron. Soc. 423, L92–L96 (2012).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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