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約120億年前の最も遠い超新星を発見

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130234

原文:Nature (2012-11-08) | doi: 10.1038/nature11643 | Cosmic explosions in the young Universe

Stephen J. Smartt

地球から非常に遠い距離にある2つの「超光度超新星」が発見された。この超新星は、ビッグバンからわずか15億年後に誕生したものだ。 約120億年前の幼年期の宇宙には、こうした「超光度超新星」はありふれた存在だったのかもしれない。

天文学者たちの研究対象は未知の領域で、それは、私たちの銀河の宇宙塵雲の奥深い場所だったり、ブラックホールのすぐそばの環境であったり、宇宙の最も遠い場所であったりする。ここ数十年、天文学者たちは地上と宇宙の最大規模の望遠鏡を使い、宇宙の最も遠い光源を見つけようとしてきた。遠くの天体ほど光が地球に届くまで時間がかかり、そのぶん私たちは過去の世界をさかのぼって見ることになる。例えば最も遠い銀河は、ビッグバンからわずか5億年後の宇宙がどんなようすだったかを教えてくれる1,2

当然のことだが、明るい天体ほど遠い距離でも見つけやすくなる。今回、「超光度超新星」と呼ぶ新しいタイプの星の爆発現象で、非常に遠くにあるものが2つ発見され、遠い宇宙への新しい扉が開かれた。発見したのはオーストラリアのビクトリア州ホーソンにあるスウィンバーン工科大学宇宙物理学・スーパーコンピューティングセンターのJeff Cookeらで、論文はNature 2012年11月8日号228ページに発表された3(論文とこの解説記事は、2012年10月31日にNatureオンライン速報版に掲載)。

超新星は星の爆発現象であり、最近まで、Ia型超新星とコア(中心核)崩壊型超新星の2種類に分類できると考えられていた。Ia型超新星になるのは連星系を作っている白色矮星で、白色矮星が伴星から質量を得て臨界質量に達して、超新星爆発が起こる。一方、コア崩壊型超新星になるのは大質量星だ。大質量星は、核融合により中心核内でどんどん重い元素を作り出し、水素とヘリウムから出発してついには鉄ができる。鉄でできた中心核はやがて、重力に対して自身を支えきれなくなってつぶれ、約1046ジュールのエネルギーを放出する。このエネルギーの大半はニュートリノの形で放出され、このニュートリノが星の外層部にぶつかって衝撃波を生み、それが目に見える超新星爆発を作り出す。こうしてできた超新星は、数か月にわたって太陽の10億倍の強さでエネルギーを放射する。

遠い宇宙のIa型超新星はよく調べられており、Ia型超新星を標準光源として使い、ダークエネルギーの存在を発見した研究は、2011年のノーベル物理学賞を受賞した。ダークエネルギーの存在を発見できたのは、遠く、赤方偏移が約0.7に達するIa型超新星を見つけることができたためだった。この超新星爆発が起こったのは、宇宙が70億歳で現在の半分の年齢だったときに相当する。Ia型超新星の最も最近の調査はハッブル宇宙望遠鏡で行われ、赤方偏移1.55のものが見つかっている4。一方、コア崩壊型超新星は、ガンマ線バーストを伴ったものが赤方偏移約1で見つかっている5

Cookeらは、赤方偏移が高く、Ia型とコア崩壊型よりもずっと明るい超新星を見つけるため、ハワイのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)における観測プロジェクト「レガシーサーベイ」のデータを新しいやり方で使った。この数年の間に、広い視野をカバーする地球に近い宇宙の調査から、新しいタイプの超新星グループが見つかり、「超光度超新星」と命名されていた(図1)6-8

図1:「超光度超新星」と宇宙論的時間の遅れ
このグラフは、2つのタイプの「超光度超新星」(R型とI型)と9、従来のタイプの超新星(Ia型とコア崩壊型超新星の亜類型であるIb、Ic、II型)について、光度の時間的変化を示している。等級は天体の光度を対数目盛りで示す量で、1等級の差は光度の2.5倍の差に相当する。左の縦軸が絶対等級で、右の縦軸は赤方偏移(z)4にある超新星を地球で観測した等級。時間は超新星のピーク光度からの日数で示され、下の横軸は超新星の場所での時間で、上の横軸は赤方偏移4の超新星を地球で観測した時間。Cookeらは、CFHTレガシーサーベイの画像を一定期間(例えば6か月)分ずつ足し合わせて信号対雑音比を改善することにより、赤方偏移2.05と3.9にある2つの「超光度超新星」を発見した3。この方法は、過去の高赤方偏移の天体を調べるときには、時間分解能の低下にはならない。宇宙論的時間の遅れにより、観測者には、天体の場所にいる場合よりも宇宙がゆっくり(1+z倍の時間をかけて)発展するように見えるからだ。Cookeらは、赤方偏移3.9の超新星の光度変化について、実際に地球で観測した時間間隔の5分の1の時間間隔ごとのデータを得た。

「超光度超新星」は一般的に、Ia型超新星よりも10倍明るく、通常のコア崩壊型超新星よりも100倍明るい。この異常な現象を理解するため、天文学者たちは、観測された特徴をもとに、少なくとも3つのグループに分類した9。Cookeらはこうした結果をふまえ、巧妙なテクニック10を応用して最も遠い超新星の探索を行った。CFHTレガシーサーベイの画像を一定期間分ずつ足し合わせて信号対雑音比を改善し、高赤方偏移の宇宙の広くて深い範囲を探索したのだ。そして、この結果、彼らは、低赤方偏移で見つかっていた「超光度超新星」の一部とよく似た、2つの過渡的な事象を発見したのだった。

「超光度超新星」の起源に関する仮説の1つは、対不安定性仮説と呼ばれている。それによると、「超光度超新星」の前駆天体は、太陽の約100~300倍の質量を持つ非常に重い星だ。1960年代の理論研究者たちは、もしもそれほど大きな星が初期の質量の大部分を維持できたとしたなら、その中心核は、電子・陽電子(陽電子は電子の反粒子)対を作るほど、大きく熱くなる可能性があると予測した11。このプロセスは星の内圧を減らし、中心核は収縮して109℃を超える温度に達する。これは太陽の中心核の約250倍という高温だ。この中心核収縮の結果、太陽質量の60倍の炭素と酸素が作り出される可能性があり、それはすぐに巨大な熱核爆発を起こして核融合し、鉄族元素に至るさらに重い元素が作られる。そして、不安定で放射性のニッケル56ができるが、これは安定な鉄56に崩壊し、その際に、ガンマ線が放出されて超新星を加熱し、非常に強い放射が生じるようになる。

理論モデルは、太陽質量の4~10倍のニッケル56が生成されるかもしれないと予測している。このプロセスはIa型超新星で起こるプロセスと似ているが、Ia型超新星の場合は、小さな白色矮星から太陽質量のわずか0.7倍のニッケル56が作られるにすぎない。Cookeらは、今回発見した2つの「超光度超新星」は、対不安定型超新星だと提案している。

今回見つかった超新星は、赤方偏移が2.05と3.9であり、爆発したのはそれぞれビッグバンの30億年後と15億年後だ。赤方偏移3.9のものは、今までに見つかった中で最も遠い超新星だ。ただし、超新星に伴っているものかもしれないガンマ線バーストは、もっと高い赤方偏移のものが見つかっている2,5。今回見つかった超新星は、明らかに過渡的な事象であり、非常に興味深い。この超新星を擁する銀河のスペクトルはハワイのケック望遠鏡で得られ、赤方偏移がはっきりと測定された。しかし、超新星そのもののスペクトルは得られていない。

一方、地球近くにある対不安定型の超新星候補で、よく調べられたケースはSN2007biだけしかない12,13。しかし、Cookeらよりもっと地球に近い領域の広視野サーベイで、この1年間にほかに数例が見つかっている。ただ、まれであることには変わりない9。SN2007biの物理的正体についても議論が続いている。一部の研究者は、対不安定型超新星ではなく、非常に質量の大きな星で通常のコア崩壊が起きたのか13、マグネター(強い磁場を持つ中性子星)によって規模が大きくなった超新星ではないかと提案している14

天文学者たちは長年、赤方偏移が10を超えるところにある、宇宙で最初の超新星と出会う夢を見続けてきた。一方、理論研究は、そのような高赤方偏移では、質量の非常に大きい星や対不安定型超新星はありふれた存在かもしれないと予測していた。Cookeらは今回、赤方偏移4の超新星を見つけることが現在の技術で可能であることを示し、私たちの水平線を一気に拡大した。ただ、これらの非常に明るい爆発の正体については、高赤方偏移の場合も低赤方偏移の場合も不確かさが残っている。それでもCookeらの研究は、「超光度超新星」の一部のタイプが幼年期の宇宙に存在し、その発生頻度は、地球に近い宇宙での発生頻度よりもずっと高いかもしれないことを示している。

次の課題は、「超光度超新星」がピーク光度に達したときに発見し、スペクトルを得て、その正体が何であるかを解明すること、そして、それらを高赤方偏移宇宙のセンサーとして使うことだ15

(翻訳:新庄直樹)

Stephen J. Smarttは、英国クイーンズ大学ベルファスト校の数学・物理学部宇宙物理学研究センターに所属。

参考文献

  1. Zheng, W. et al. Nature 489, 406–408 (2012).
  2. Tanvir, N. R. et al. Nature 461, 1254–1257(2009).
  3. Cooke, J. et al. Nature 491, 228–231 (2012).
  4. Rodney, S. A. et al. Astrophys. J. 746, 5 (2012).
  5. Hjorth, J. & Bloom, J. S. in Gamma-Ray Bursts (eds Kouveliotou, C., Wijers, R. A. M. J. & Woosley, S. E.) Ch. 9 (Cambridge Univ. Press, 2011).
  6. Quimby, R. M. et al. Nature 474, 487–489 (2011).
  7. Pastorello, A. et al. Astrophys. J. Lett. 724, L16 (2010).
  8. Chomiuk, L. et al. Astrophys. J. 743, 114 (2011).
  9. Gal-Yam, A. Science 337, 927–932 (2012).
  10. Cooke, J. et al. Nature 460, 237–239 (2009).
  11. Rakavy, G. & Shaviv, G. Astrophys. J. 148, 803 (1967).
  12. Gal-Yam, A. et al. Nature 462, 624–627 (2009).
  13. Young, D. R. et al. Astron. Astrophys. 512, A70 (2010).
  14. Dessart, L. et al. Mon. Not. R. Astron. Soc. Lett. 426, L76–L80 (2012).
  15. Berger, E. et al. Astrophys. J. Lett. 755, L29 (2012).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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