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2011年に出版された論文の半数が無料で読める

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2013.131120

原文:Nature (2013-08-22) | doi: 10.1038/500386a | Half of 2011 papers now free to read

Richard Van Noorden

研究論文のオープンアクセス化はどんどん進み、すでに50%の論文がネットから無料ダウンロードできる時代となったようだ。

2011年に出版された研究論文をインターネットで検索すると、50%の確率で無料のダウンロードができる。今回、欧州委員会のために作成された報告書1ではこのような指摘がなされており、従来考えられていたよりも多くの研究論文がインターネット上で無料公開されているようだ。報告書は2013年8月21日に発表され、オープンアクセス推進派を元気づけているが、一方で、数値は実際より高過ぎると眉をひそめる専門家もいる。

ここ数年、公的資金の助成を受けた研究の成果論文を一般公開する動きが着実に進んでおり、最良とされる見積もり2,3によれば、インターネット上で無料で読める論文の割合は約30%とされていた。しかし、この数字は少な過ぎると主張するのが、コンサルタント会社Science-Metrix社(カナダ・モントリオール)の社長で創立者のÉric Archambaultだ。彼が今回、欧州委員会のために分析を担当した人物だ。

同社は最初、ケベック大学(カナダ・モントリオール)の認知科学者でオープンアクセス活動家のStevan Harnadが率いるチームに対し、2008年に出版された2万編の論文を(Elsevier社が運営する論文データベースScopusから)無作為抽出して、その状況を調べるよう依頼した。Harnadチームは、同大学のコンピューター科学者Yassine Gargouriが作成したプログラムを使って調べ、2012年12月にダウンロードした論文の32%が無料公開されていることを見いだした。ところが、Archambault自身のグループが2万編中の500編を手作業で検証したところ、数字が跳ね上がった。グーグルやその他の検索エンジンとリポジトリを使って個々に調べると、無料で読める論文の割合が48%にまで達したのだ。

Science-Metrix社はこの初期検証の結果を踏まえ、2004~2011年にダウンロードされた32万編の論文を対象として、一般に「ハーベスター」と呼ばれる自動化検索ソフトウエアの独自版を実行した。これは、出版社のウェブサイト、研究機関のアーカイブ、arXivやPubMed Centralなどのリポジトリ、さらに、学術交流サイトのResearchGateや検索エンジンCiteSeerXなどを利用して自動的に検索するソフトだ。

SOURCE: Science-Metrix

その結果、国や研究分野によってばらつきはあるものの、2008~2011年に出版された論文の平均43%が無料公開されていることが判明した(「オンラインでの無料公開」参照)。しかし、「ハーベスター」では全ての無料公開論文を検出できないので、実際の数値はこれより高いと考えられる。これを補正すれば、2011年に出版された論文中の無料公開論文の割合は約50%になる、とArchambaultは話す。

今回の報告書は「私の楽観論を裏付けてくれました」と話すのは、ハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)学術コミュニケーション局のディレクターで、研究成果のオープンアクセス化を主唱するPeter Suberだ。彼は、この報告書には現役科学者の日常が反映されているとみる。「普通、インターネットで有料コンテンツの壁にぶつかると、無料で読む方法をグーグルで調べます。それが見つかる機会が多くなっているということです」と話す。

変化の原因の1つが、オープンアクセスジャーナルの台頭だ。オープンアクセスジャーナルで出版された論文の割合は、2004年には4%だったが、2011年に12%に達したことが同じ報告書に示されている。この数値は、ハンケン経済大学(フィンランド・ヘルシンキ)で情報システムを研究するBo-Christer Björkが2012年発表した数値と一致している。

ところが、他の方法で無料公開されている査読付き論文の数も増えているのだ。そこには、出版社が、出版から一定期間(1年が多い)を経過した後に無料公開するものや、期間限定プロモーションの一環として無料公開したものが含まれている。さらに、研究者自身が、リポジトリや個人のホームページにオンラインアーカイブした論文も含まれる。ただし、これらの論文の中には、無料で読めるが、オープンアクセスの正式な定義に該当しないものもある。それは例えば、読者が論文を自由に再利用できるかどうか、詳細が記載されていない論文だ。

今回の報告書では、論文の種類、掲載場所、掲載方法ごとの分析はしていないとArchambaultはことわりを入れている。「状況が複雑過ぎて、調べてまとめるのが非常に難しいのです」。

これに対してBjörkは、作業は慎重に行われたようだが、自動化ハーベスターのプログラムの詳細が分からないため、方法の評価はできないと話している。そしてこう続けた。「出版から約1年半を経過した論文が無料公開されている割合が30%に達している点については、専門家の意見は一致すると思います。ただ、それ以上のプラス数字については調査方法によって異なり、今回の報告書では、最も高めの数値になっていると思います」。

今回の報告書自体は、論文のような査読過程を経ていない。従って、2011年に出版された論文は50%の「転換点」を迎えたと記されているが、Suberはこの表現が正しいかどうか確信が持てないという。「真の転換点は、数値ではなく、科学者が習慣としてオープンアクセスを利用するようになったときだと思います」と彼は言う。

Harnadは、次の段階として、論文が無料公開される時点をこれまで以上に正確に計測すべきだと考えている。「1年の禁止期間を経なければ無料公開できないのであれば、勝利ではありません」と彼は言う。通常、グーグルは、全ての自動化ハーベスターをブロックしており、計測精度をこれ以上高めるのは難しいのだという。彼は、オープンアクセスに関する調査研究のために、グーグルは特別の配慮をすべきだと考えている。

今後数年間で、インターネット上で無料で読める論文の割合は増えていくとみられる。欧州委員会は、2014年以降、欧州連合の助成による研究の結果を全てオープンアクセスとしなければならないという方向性を打ち出した。また2月には、米国大統領府が、政府助成研究は出版後12カ月以内に無料で読めるようにすべきとの方針を示した(Nature 2013年2月28日号414~415ページ参照)。連邦政府の関係機関は、この方針を実現するための計画を米国科学技術政策局に提出しなければならず、締切は8月22日だ。

(翻訳:菊川要)

参考文献

  1. Archambault, E. et al. Proportion of Open Access Peer-Reviewed Papers at the European and World Levels — 2004–2011 (Science-Metrix, 2013).
  2. Laakso, M. & Björk, B.-C. BMC Med. 10, 124 (2012).
  3. Björk, B.-C., Laakso, M., Welling, P. & Paetau, P. J. Am. Soc. Inf. Sci. Technol. (in the press).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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