Research Abstract

細胞内Gタンパク質シグナル伝達の24時間周期の調節は、視交叉上核中の細胞の同期と律動性に影響する

本論文では、Gαiを不活性化することが知られているRGS16(regulator of G protein signalling 16)の量が概日時間の決まった時点でだけ増加して、SCNにおける細胞内環状AMPシグナル伝達を時間に依存して活性化していることを報告する

Circadian regulation of intracellular G-protein signalling mediates intercellular synchrony and rhythmicity in the suprachiasmatic nucleus

2011年5月24日 Nature Communications 2 : 327 doi: 10.1038/ncomms1316

概日リズムを制御している視交叉上核(SCN)中の数千の細胞内時計の同期した振動は、正確なタイミングで行われる細胞間コミュニケーションによって協調 されているが、その仕組みはほとんどわかっていない。本論文では、Gαiを不活性化することが知られているRGS16(regulator of G protein signalling 16)の量が概日時間の決まった時点でだけ増加して、SCNにおける細胞内環状AMPシグナル伝達を時間に依存して活性化していることを報告する。Rgs16遺 伝子を除去するとcAMPの概日周期での産生が起こらなくなり、その結果として行動リズムの概日周期が長くなる。時計で制御されているRGS16による cAMPシグナルの時間的に正確な調節は、SCN背内側部が腹内側部と正常な位相関係を維持するのに必要である。したがって、細胞内Gタンパク質シグナル 伝達のRGS16に依存した時間的調節は、SCNペースメーカーニューロンの細胞間同期を協調させており、それによって行動の24時間リズムを規定してい る。

土居雅夫1,石田敦士2,三宅晶子2,佐藤美穂1,小松梨恵1,山崎文義1,木村郁夫3,土屋創健3,郡 宏4,5,瀬尾和志1,山口賀章1,松尾雅博1,Jean-Michel Fustin1,田中里奈1,三戸靖子1,山田裕之1,高橋ゆかり1,荒木通啓6,中尾和貴7,相沢慎一7,小林正樹8,Karl Obrietan9,辻本豪三3 & 岡村 均1,2

  1. 京都大学大学院薬学研究科 システムバイオロジー分野
  2. 神戸大学大学院医学系研究科 分子脳科学分野
  3. 京都大学大学院薬学研究科 ゲノム創薬科学分野
  4. お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション
  5. 独立行政法人 科学技術振興機構
  6. 京都大学 先端技術グローバルリーダー養成ユニット
  7. 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
  8. 東北工業大学 知能エレクトロニクス学科
  9. オハイオ州立大学(米国)
Synchronous oscillations of thousands of cellular clocks in the suprachiasmatic nucleus (SCN), the circadian centre, are coordinated by precisely timed cell–cell communication, the principle of which is largely unknown. Here we show that the amount of RGS16 (regulator of G protein signalling 16), a protein known to inactivate Gαi, increases at a selective circadian time to allow time-dependent activation of intracellular cyclic AMP signalling in the SCN. Gene ablation of Rgs16 leads to the loss of circadian production of cAMP and as a result lengthens circadian period of behavioural rhythm. The temporally precise regulation of the cAMP signal by clock-controlled RGS16 is needed for the dorsomedial SCNto maintain a normal phase-relationship to the ventrolateral SCN. Thus, RGS16-dependent temporal regulation of intracellular G protein signalling coordinates the intercellular synchrony of SCNpacemaker neurons and thereby defines the 24 h rhythm in behaviour.

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