今月号

注目のハイライト

その他のハイライト

特集: CRISPRツールとCRISPR療法

CRISPRによるゲノム編集は、今や分子生物学に定着した標準技術の1つであるだけでなく、重要な新規治療法群でもあり、臨床試験が始まっている。CRISPRツールは、ノックイン・ノックアウトモデル、生物学的スクリーニング、および遺伝子の多重スクリーニングによる複雑な生物学的性質の解明に不可欠となっている。これらの方法は、感度と再現性をさらに向上させるために絶えず改良され、すでに貴重な生物学的知見をもたらしている(Hanna & DoenchのReview参照)。

Cas9は今でも、研究室で最も広く用いられているエンドヌクレアーゼだが、その大きなサイズ、二本鎖切断への依存、オフターゲットのエンドヌクレアーゼ活性、遺伝子置換効率の低さから、好ましい特性を持つ新規酵素を発見するための研究と共に、従来型のエンドヌクレアーゼを改変して新たな活性の幅を広るための研究が推進されている。最近の例としては、dCas–デアミナーゼ融合タンパク質によるDNA塩基編集、Cas12kやCascadeとトランスポザーゼとの複合体によるDNAの組み込み、ADAR(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)酵素によるRNA塩基編集、さらにはdCasに結合させた転写調節因子やエピジェネティック調節因子などがある(Anzalone et al.のReview参照)。

こうした実験用ツールはトランスレーショナル研究プログラムに移行する例が増えており、臨床現場でのCRISPR薬の影響力が強まることが予想される(Editorial参照)。一部の臨床試験では、体細胞がex vivoで編集されて、患者の血流中に注入されている。Cas9とそのガイドRNAをアデノ随伴ウイルスベクターによって網膜下へ送達する試験も行われている。全般的に言うと、CRISPR療法で対応可能な疾患を大幅に増やすには、送達手段の最適化と刷新を目指した協調的な取り組みが必要となる。多くの点で、CRISPR装置をさらに広範な標的組織へ高効率で送達する新しい方法を発見することが重要な課題となろう(van Haasteren et al.のReview参照)。

小誌のポッドキャストForumでは、スペシャルエピソードとして、Markus ElsnerがJennifer DoudnaとDavid Liuにゲノム編集の今後の展望と課題を聞いている。著名人ポッドキャストシリーズでは、Brady Huggettが、エディタス・メディシン社とアビラ・セラピューティクス社のCEOを務めたKatrine Bosleyにインタビューしている。Bosleyは、オハイオ州での生い立ちやバイオテクノロジー業界での最初の仕事(一般事務職)について話し、CRISPR企業であるエディタス社での5年間が1000年のように感じられた理由を語っている。

最後に、CRISPRに基づく遺伝子編集法、疾患の治療法、および核酸のターゲッティング法に関連する最近の特許について概説する(Patent Table参照)。

Editorial

臨床の最先端

The clinical cutting edge p.767

doi: 10.1038/s41587-020-0612-2

News & Views

著名人ポッドキャストシリーズ:Katrine Bosley

First Rounders: Katrine Bosley p.812

doi: 10.1038/s41587-020-0598-9

Patents

Review Article

CRISPR–Cas実験の設計と解析

Design and analysis of CRISPR–Cas experiments p.813

doi: 10.1038/s41587-020-0490-7

CRISPR–Casヌクレアーゼ、塩基エディター、トランスポザーゼ、およびプライムエディターによるゲノム編集

Genome editing with CRISPR–Cas nucleases, base editors, transposases and prime editors p.824

doi: 10.1038/s41587-020-0561-9

送達の課題:治療用ゲノム編集の期待を実現する

The delivery challenge: fulfilling the promise of therapeutic genome editing p.845

doi: 10.1038/s41587-020-0565-5

In This Issue

CRISPRツールとCRISPR療法

Focus on CRISPR tools and therapies p.765

doi: 10.1038/s41587-020-0611-3

Editorial

アプリの信頼性の欠如

The app credibility gap p.768

doi: 10.1038/s41587-020-0610-4

News

COVID-19の革新的な診断法が急増

COVID-19 spurs wave of innovative diagnostics p.769

doi: 10.1038/s41587-020-0597-x

コロナウイルスワクチン開発企業が抗体依存性の感染増強を警戒

Coronavirus vaccine developers wary of errant antibodies p.773

doi: 10.1038/d41587-020-00016-w

COVID-19のヒト化ACE2マウスモデル

A COVID-19 model p.773

doi: 10.1038/s41587-020-0606-0

デンマークの二重特異性抗体と抗体薬物複合体の出合い

Danish bispecifics meet ADCs p.774

doi: 10.1038/s41587-020-0607-z

世界の1か月

Around the world in a month p.775

doi: 10.1038/s41587-020-0596-y

環境に優しい建築の新たな波を予感させるバイオコンクリート

Bioconcrete presages new wave in environmentally friendly construction p.776

doi: 10.1038/s41587-020-0595-z

NGSを用いた初のCOVID-19診断法

First NGS-based COVID-19 diagnostic p.777

doi: 10.1038/s41587-020-0608-y

News Feature

タンパク質設計の中心地

The hothouse for protein design p.779

doi: 10.1038/s41587-020-0586-0

Feature

Patents

マイクロバイオーム治療薬と特許保護

Microbiome therapeutics and patent protection p.806

doi: 10.1038/s41587-020-0579-z

Brief Communications

二重塩基エディターがヒト細胞でシトシン塩基とアデニン塩基の同時置換を触媒する

Dual base editor catalyzes both cytosine and adenine base conversions in human cells p.856

doi: 10.1038/s41587-020-0527-y

二重デアミナーゼCRISPR塩基エディターがアデニンとシトシンの同時編集を可能にする

A dual-deaminase CRISPR base editor enables concurrent adenine and cytosine editing p.861

doi: 10.1038/s41587-020-0535-y

CからTおよびAからGの同時塩基置換を誘導する塩基エディター

Base editors for simultaneous introduction of C-to-T and A-to-G mutations p.865

doi: 10.1038/s41587-020-0509-0

Letters

CRISPR–Cas12によるSARS-CoV-2の検出

CRISPR–Cas12-based detection of SARS-CoV-2 p.870

doi: 10.1038/s41587-020-0513-4

シトシン・アデニン二重塩基エディターによる植物遺伝子の選択的でランダムな変異導入

Targeted, random mutagenesis of plant genes with dual cytosine and adenine base editors p.875

doi: 10.1038/s41587-019-0393-7

Articles

Casドメインの互換性および活性が高いアデニン塩基エディターのファージによる進化

Phage-assisted evolution of an adenine base editor with improved Cas domain compatibility and activity p.883

doi: 10.1038/s41587-020-0453-z

活性および治療応用性の高いアデニン塩基エディターの定向進化

Directed evolution of adenine base editors with increased activity and therapeutic application p.892

doi: 10.1038/s41587-020-0491-6

「Journal home」へ戻る

プライバシーマーク制度