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BID-seqによる定量的塩基配列解読が哺乳類mRNA中の多数のプソイドウリジンを塩基分解能で明らかにする

Nature Biotechnology 41, 3 doi: 10.1038/s41587-022-01505-w

哺乳類mRNA中のプソイドウリジン(Ψ)の機能的特性評価では、全トランスクリプトームのΨを明らかにする定量的な方法が存在しないことが障害となっている。本論文で紹介するBID-seq(bisulfite-induced deletion sequencing)は、バイサルファイトを介した反応を利用し、シトシンを脱アミノ化させることなく、逆転写時にプソイドウリジンを化学量論的に欠失に変換する方法である。BID-seqは、複数のヒト細胞株および12種類のマウス組織において、化学量論情報を伴う多数のΨ部位の検出を、10~20 ngの投入RNAで可能にした。我々は、哺乳類mRNA中のΨのコンセンサス配列を明らかにし、個々のΨの蓄積に異なる「書き込み因子(writer)」タンパク質を対応付けた。得られた結果から、ヒトがん細胞でTRUB1によって導入されたΨ部位がもつ転写物安定化の役割が明らかになった。また、哺乳類mRNAの終止コドン中にΨが存在することが見いだされ、in vivoでの終止コドン読み飛ばしの促進でΨが果たす役割が確認された。BID-seqは、さまざまな生物学的過程でΨが担う役割に関する今後の研究を可能にすると考えられる。

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