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変動型メチル化時計はヒト組織で高い時間分解能での細胞系統追跡を行う

Nature Biotechnology 40, 5 doi: 10.1038/s41587-021-01109-w

細胞の系統を記録する分子時計は変異が遅過ぎるため、成体組織での細胞再生の短時間スケールの動態を評価することができない。本論文では、メチル化と脱メチル化の継続によってメチル化状態と非メチル化状態との「フリップフロップ」が繰り返されている細胞では変動するDNAメチル化標識が時計として利用可能であることを明らかにする。標準的なメチル化アレイを用いて内在する変動性のCpG(fCpG)部位を特定し、そのデータからヒト成体幹細胞の動態を定量的に評価する数学的モデルを開発した。小腸陰窩は結腸と比較して幹細胞をわずかに多く含み、幹細胞の置換は小腸のほうが低速であることが推測された。生殖細胞系列のAPC変異は、陰窩1個あたりの置換数を増加させた。血中では、急性白血病の高速の拡大および慢性白血病の緩徐な増殖が測定された。このように、ヒトの体細胞の誕生と死のパターンは、変動型メチル化時計(fluctuating methylation clock)によって測定することができる。

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