Review Article

イムノペプチドミクスによる腫瘍抗原の発見

Nature Biotechnology 40, 2 doi: 10.1038/s41587-021-01038-8

実用化可能な腫瘍抗原の発見は、T細胞受容体を導入したT細胞や、患者特異的なmRNAワクチンやペプチドワクチンなど、各種のがん免疫療法の開発に不可欠である。既知の腫瘍抗原の大多数は大規模な分子特性評価によって発見されており、ゲノムのタンパク質コード領域に由来すれば標準的(カノニカル)とされる。こうしたペプチドは、ヒト白血球抗原に結合したものを腫瘍から溶離して質量分析を行い、得られたスペクトルと参照データベースのマッチングを行うことによって発見される。最近、タンパク質コード領域以外の塩基配列に由来する抗原や非標準的な抗原プロセシング機構によって生じる抗原といった非標準的抗原が、質量分析に基づく免疫ペプチドミクスによって発見されるようになった。この方法をトランスクリプトミクスやリボソームプロファイリングと組み合わせることで、何千種類もの非標準的ペプチドの発見が可能となり、そのうちの相当数は腫瘍にしか検出されないものになると考えられる。膨大な非標準リファレンスに対するスペクトルマッチングでは、偽陽性が生じる可能性がある。しかし、高感度な質量分析、分析的検証、高度なバイオインフォマティクスソリューションにより、提示抗原や臨床的意味を持つ標的の全体像が明らかになるものと期待される。

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