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ヘテロクロマチンとユークロマチンの単一細胞プロファイリングによってエピジェネティクスの動態を明らかにするChromatin Velocity

Nature Biotechnology 40, 2 doi: 10.1038/s41587-021-01031-1

単一細胞レベルのオープンクロマチンの検討は最近の研究で成功しているが、ヘテロクロマチンとその基盤であるゲノムの決定因子のハイスループットな単一細胞評価は今なお課題となっている。我々は、トリメチル化されたヒストン3のリジン9(H3K9me3)に結合してヘテロクロマチンのアセンブリーと維持に関与するヘテロクロマチンタンパク質1α(HP-1α)のクロモドメイン(CD)を含むハイブリッドトランスポザーゼを作製し、scGET-seq(single-cell genome and epigenome by transposases sequencing)という単一細胞法を開発した。これはscATAC-seq(single-cell assay for transposase-accessible chromatin with sequencing)とは異なり、オープンクロマチンとクローズドクロマチンの両方を網羅的に探り、同時にその基盤であるゲノム塩基配列を記録する方法である。がん由来オルガノイドとヒト由来異種移植片(PDX)モデルでscGET-seqを試験したところ、抗がん剤耐性に寄与する遺伝的事象と可塑性駆動機構が発見された。次に、クローズドクロマチンとオープンクロマチンとで集積度が異なることに基づき、エピジェネティックな修飾の軌跡を単一細胞レベルで明らかにする方法Chromatin Velocityを考案した。Chromatin Velocityは幹細胞再プログラム化時のエピジェネティックな再編成の道筋を明らかにし、そうした発生過程を推進する重要な転写因子を特定した。scGET-seqは、あらゆる細胞過程の基盤となっているゲノムとエピジェネティクスの全体的動態を明らかにする。

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