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ウイルス変異株を見分ける国家規模のSARS-CoV-2下水サーベイランス

Nature Biotechnology 40, 12 doi: 10.1038/s41587-022-01387-y

下水疫学による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のサーベイランスが、個々の感染例の塩基配列解読を補完する方法になろうとしている。しかし、変異株のロバストな定量、および新興変異株の新規検出は、既存の戦略にとって今なお容易でない。我々は、2020年12月から2022年2月まで、オーストリアの人口の59%以上をカバーする94自治体の集水地域を代表する下水試料3413点について、高性能の塩基配列解読を行った。ロバストさを求めて設計された下水管の変異株の定量法(VaQuERoと命名)により、複合下水試料から事前定義変異株の時空間的な存在量が推定された。得られた結果は、31万1000例を超える感染者の疫学的記録に照らして検証した。さらに、ウイルスの遺伝的多様性がデルタ株の流行中に上昇したことを明らかにし、新興変異株を予測する枠組みを示し、変異株に固有の再生産数を下水から計算することで着目変異株の再生産優位性を測定した。以上により本研究は、国家規模の下水疫学に公衆衛生を支える能力があることを示しており、大規模な個別モニタリングを行えない国々にとって特に有用なものになることが期待される。

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