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VASA-seqによる単一細胞のハイスループット全RNA塩基配列解読

Nature Biotechnology 40, 12 doi: 10.1038/s41587-022-01361-8

単一細胞トランスクリプトームの塩基配列解読法の大多数は、ポリアデニル化転写物の末端を増幅するものであり、全細胞トランスクリプトームの一部しかとらえられない。このため、長鎖非コード転写物、短鎖非コード転写物、および非ポリアデニル化タンパク質コード転写物には検出されないものが多く、選択的スプライシングの解析の妨げとなっている。そこで今回我々は、単一細胞の全トランスクリプトームを検出するVASA-seqを開発した。これは、細胞溶解後の全RNA分子の断片化およびテーリングが可能にした方法であり、プレートを用いるフォーマットとマイクロ流体デバイスの両方に適用可能である。我々は、マウス胚発生過程の原腸形成期および器官形成初期の3万個以上の単一細胞にVASA-seqを用いた。全単一細胞トランスクリプトームの動態を解析することで、細胞型マーカー(多くが非コードRNAに基づく)を発見し、非ポリアデニル化ヒストン遺伝子群の検出によるin vivo細胞周期解析を行った。その結果、RNA velocity解析が改善され、血液成熟の軌跡を正確にさかのぼって再現することができた。また、得られたVASA-seqデータから、哺乳類の発生期における選択的スプライシングの網羅的な解析が可能となり、血液発生および心臓の形態形成における大きな再配列が見いだされた。

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