Perspective

マサチューセッツ工科大学の生命科学知的財産のライセンシング

Nature Biotechnology 39, 3 doi: 10.1038/s41587-021-00843-5

学術研究機関は、技術のライセンシングとスタートアップ企業の創出を通じてバイオテクノロジー産業で中心的な役目を果たしているが、その成果や影響力の大きさに関するデータはほとんど見られない。今回我々は、そのような研究機関の1つであるマサチューセッツ工科大学(MIT)による技術ライセンシングの体系的調査を紹介する。1983~2017年にMITのTechnology Licensing Office(技術移転機関)を通じて設立された治療薬専門の生命科学企業76社に関するデータを用いて、オレンジブックに引用されているMITの特許、調達した資本、M&A(合併・買収)の成果、MITの知的財産の実施権取得者へ許諾された特許、発見された薬物候補、米国での医薬品承認(バイオ医薬産業におけるイノベーションの重要なベンチマーク)など、影響力に関する複数の基準を作成した。2017年12月現在、オレンジブックに掲載されている4種類の承認済み小分子薬でMITの特許が引用されているが、別の31種類のFDA承認薬(第III相以降に獲得された候補薬を除く)にはMITの実施権取得者による何らかの関与があった。FDA承認薬31種類のうち55%は新規小分子薬あるいは新規生物製剤であり、55%が優先審査を受けており、アンメット・メディカル・ニーズに取り組むものであることが分かる。今回紹介する方法論は、他の学術研究機関でも治療薬領域の知的財産の成果を追跡するのに有用な枠組みになると考えられる。

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