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マウス腸内マイクロバイオームの統制的改変でアテローム性動脈硬化症の進行が抑制される

Nature Biotechnology 38, 11 doi: 10.1038/s41587-020-0549-5

腸内マイクロバイオームは順応性のある微生物群集であり、食物をはじめとするさまざまな要因に応答して変化し、アテローム性動脈硬化症などの各種慢性疾患が発症する一因となることがある。我々は、細菌の増殖を選択的に変化させることができる分子を発見するためのマウス腸内マイクロバイオームのin vitroスクリーニングプロトコルを考案した。この方法により、西洋食(WD)の腸内マイクロバイオームを低脂肪食のマイクロバイオーム状態に改変する環状D,L-α-ペプチドが発見された。WDを与えられているLDLr−/−マウスにこのペプチドを毎日経口投与すると、血漿総コレステロール値が低下し、アテローム斑が抑制された。マイクロバイオームを抗生物質で枯渇させると、こうした作用は認められなくなった。ペプチド投与は、マイクロバイオームのトランスクリプトームを再プログラム化し、炎症促進性サイトカイン(インターロイキン6、腫瘍壊死因子α、インターロイキン1βなど)の産生を抑制し、短鎖脂肪酸と胆汁酸のレベルを再調整し、腸管バリアの完全性を改善して、腸の制御性T細胞を増加させた。化学物質による統制的な操作は、腸内マイクロバイオームを化学生物学的に解明するための新たなツールとなり、マイクロバイオームを標的とする治療法を進歩させる可能性がある。

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