Letter

前脳オルガノイド内の位置的形質の指定

Nature Biotechnology 37, 4 doi: 10.1038/s41587-019-0085-3

現在の技術で作製されるヒト脳オルガノイドでは、ヒト脳の組織学的特徴は再現されるが、再現性のあるトポグラフィックな組織化は生じない。発生中、空間トポグラフィーは、個別のシグナル伝達センターから放出されるシグナル伝達分子の濃度勾配によって決定される。我々は、前脳オルガノイドにシグナル伝達センターを導入すれば神経組織の位置的形質が距離依存的に指定されるという仮説を立てた。本論文では、発生中の前脳オルガノイドにソニック・ヘッジホッグ(SHH)タンパク質の濃度勾配を引き起こし、背腹軸および前後軸に沿った秩序ある自己組織化を可能とするシステムを紹介する。SHHのパターンが形成された前脳オルガノイドでは大きな前脳細区画が形成され、それらがin vivo様のトポグラフィーで配置されていた。SHHは、in vivoでの挙動と同様に、オルガノイドでも長距離のシグナル伝達活性を示した。また、SHHのパターンが形成された大脳オルガノイドをツールとして用い、SHHシグナル伝達においてコレステロール代謝が果たす役割を調べた。総合すると、本研究では、誘導性シグナル伝達がヒト脳オルガノイドでin vivo様のトポグラフィーを再現する効果的な組織化戦略であることが明らかになった。

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