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単一細胞マスサイトメトリーによる増殖の追跡が幹細胞メモリー様T細胞の作製を最適化する

Nature Biotechnology 37, 3 doi: 10.1038/s41587-019-0033-2

ナイーブT細胞の多能性T細胞への選択的な分化は、細胞に基づくがん免疫療法の創出に関して、臨床上の大きな関心の的となっている。細胞の分化は、分裂状態と時間に大きく左右される。本研究では、マスサイトメトリーによる細胞増殖履歴の追跡用に色素希釈法を改変し、複雑なex vivo環境で活性化して増殖している単一のヒトナイーブT細胞の分裂、時間、および調節タンパク質の発現を切り離した。23種類のマーカーを用いることにより、主に分裂状態や時間に支配されているタンパク質群が明らかになり、未分裂の細胞が表現型多様性の大部分を占めることが見いだされた。次に、ナイーブT細胞の増殖中の細胞状態変化の地図を作製した。この地図上で細胞のシグナル伝達を調べることにより、BTKおよびITKの阻害物質であるイブルチニブが合理的に選択され、これを投与してからT細胞を活性化させると、幹細胞メモリー様T細胞の表現型への分化が導かれた。分裂状態と時間に関して広く細胞の運命を追跡するこの方法は、細胞分化の誘導に広範に応用可能である。

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