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ヒト細胞のゲノム工学にI型CRISPR–Cas系を利用する

Nature Biotechnology 37, 12 doi: 10.1038/s41587-019-0310-0

I型CRISPR–Cas系は、細菌やアーキアに最も多い適応免疫系である。標的の干渉はCascadeと呼ばれる多サブユニットのRNA誘導型複合体に依存し、標的の分解にはトランス作用型のヘリカーゼヌクレアーゼCas3を動員する。I型系は、多成分のCascade複合体の異種発現が比較的困難であるため、真核細胞のゲノム工学用にはほとんど用いられてこなかった。今回我々は、二量体化に依存する非特異的FokIヌクレアーゼドメインにCascadeを融合させ、RNA誘導型の遺伝子編集を複数のヒト細胞株において最高約50%という高い特異性と効率で実現した。FokI–Cascadeは、単一のポリシストロニックベクターにCRISPR関連(Cas)タンパク質群をコードして別のプラスミドにガイドRNA(gRNA)をコードする最適化された2成分発現系によって再構成された。ヒト細胞で完全なCascade–Cas3複合体を発現させると、最長約200 kbの選択的欠失が生じた。本研究は、極めて多く存在していながら利用されてこなかったI型CRISPR–Cas系が真核細胞のゲノム工学用に利用可能であることを示した。

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