Article

I型CRISPR–Cas系によるヒト細胞の選択的転写調節

Nature Biotechnology 37, 12 doi: 10.1038/s41587-019-0235-7

Cas9やCas12などクラス2のCRISPR–Cas系は、真核生物ゲノムのDNA塩基配列の標的化に広く使用されている。しかし、クラス1のCRISPR–Cas系は、自然界の全CRISPR系の約90%を占めているにもかかわらず、ゲノム工学への利用がほとんど研究されていない。本研究では、クラス1のCRISPR–Cas系を哺乳類細胞に発現させてDNAの標的化や転写の制御に使用できることを明らかにした。我々は、大腸菌(Escherichia coli)とリステリア菌(Listeria monocytogenes)に由来し、Cascadeと呼ばれる多成分のRNA誘導型複合体によってDNAを標的とするクラス1のCRISPR–Cas系のI型バリアントを転用した。そして、ヒト細胞でのCascadeの発現、複合体形成、核移行を検証し、プログラム可能なCRISPR RNA(crRNA)によるヒトゲノムの特定座位の標的化を実証した。活性化ドメインと抑制ドメインをCascadeに連結させることにより、ヒト細胞の標的内因性遺伝子の発現が調節された。本研究は、Cascadeの利用がCRISPRに基づいて真核生物の遺伝子調節を標的とする技術となることを実証し、今後の研究に向けてクラス1のCRISPR–Cas系に光を当てた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度