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誘導多能性幹細胞に対する提供者の年齢の影響

Nature Biotechnology 35, 1 doi: 10.1038/nbt.3749

誘導多能性幹(iPS)細胞は、自家移植治療の細胞源として研究が続けられているが、その対象には高齢患者が多いと考えられる。iPS細胞の質に対する年齢の影響を検討するために、21~100歳の提供者16人の血球からiPS細胞を作製した。高齢提供者に由来するiPS細胞はエピジェネティックな年齢の痕跡を保持しているが、それは継代によって減ぜられることが分かった。また再プログラム化したクローンの増殖により、バルクの塩基配列解読では見落とされる個々の提供者細胞の体細胞変異を発見することができた。iPS細胞のエキソーム変異は、年齢に比例して増加することが分かった。分析したすべてのiPS細胞株は遺伝子破壊変異を1カ所以上有し、その中にはがんまたは機能不全に関与しているものがあった。意外なことに、高齢提供者(90歳以上)の変異数が予想を下回っていたが、これは血液前駆細胞プールの縮小によるものと考えられる。今回の研究により、提供者の年齢がiPS細胞の異常リスクの上昇と関連していることが明らかにされ、この研究結果は再プログラム化技術の臨床開発に有用な情報を与えると考えられる。

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