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光操作によるシナプスAMPA受容体の不活性化が恐怖記憶を消去する

Nature Biotechnology 35, 1 doi: 10.1038/nbt.3710

GluA1 AMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸)受容体などの神経伝達物質受容体のシナプス伝達は、記憶の獲得や維持などの認知機能で重要な役割を持つ。これらの受容体をin vivoで時間空間的に高い精度で不活性化させる方法が存在しないことが、その生理機能の理解を妨げてきた。我々は、シナプスに移行したGluA1 AMPA受容体をCALI(chromophore-assisted light inactivation)法によってin vivoで不活性化させる技術を開発した。我々は、まずGluA1の細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体を作製した。この抗体を光増感物質(エオシン)で標識して光を照射すると、GluA1のCALIが効果的に引き起こされた。エオシンで標識したGluA1抗体を海馬CA1領域に注入したマウスに恐怖記憶を学習させ、マウスに埋め込んだカニューレを用いて海馬を緑色光に暴露すると、シナプスに移行したGluA1の不活性化により、獲得された恐怖記憶が消去された。シナプスに移行したタンパク質を不活性化させるこの光操作技術は、シナプスで機能するタンパク質が認知において果たしている生理学的役割の解明を可能にすると考えられる。

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