Perspective

Tbx18の発現による静止心筋細胞のペースメーカー細胞への直接転換

Nature Biotechnology 31, 1 doi: 10.1038/nbt.2465

心拍を発生させる洞房節(SAN)は、1万個に満たない純粋なペースメーカー細胞を含む小構造体である。SANが機能不全を起こすと、その下流で動く約50億個の心筋細胞が静止し、電気的ペースメーカー療法を施さなければ循環虚脱が生ずる。本論文では、げっ歯類の心筋細胞が、初期のSANへの指定に重要なTbx18遺伝子の発現により、in vitro およびin vivoでSAN細胞に転換されることを示す。in vivoTbx18を形質導入すると、心室心筋細胞の9.2%は、数日のうちに、SAN細胞のものと生理学的に識別不能な自発的電気発火を生ずるとともに、SAN細胞に特有の形態的および後生的特徴を示した。in vivoでモルモットの心室にTbx18遺伝子を局所導入すると、異所性のペースメーカー活性が生じ、徐脈性疾患の表現型が修正された。in vivoで形質導入された心筋は、天然のSANペースメーカー細胞の特徴である先細りの形態および生理学的な自動性を獲得した。人工SANペースメーカー(iSAN)細胞の作製により、遺伝子操作によるペースメーカーの新たな展望が開かれる。

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