Perspective

機能性CFTRタンパク質を発現する成熟気道上皮へヒト多能性幹細胞を分化させる

Nature Biotechnology 30, 9 doi: 10.1038/nbt.2328

嚢胞性線維症(CF)は、すべての上皮を介した塩素イオンおよび水の輸送を調節して肺をはじめとする種々の臓器に影響を及ぼすCFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)遺伝子の変異に起因する致死性の遺伝疾患である。本論文では、機能性CFTRを発現する気道上皮をヒト胚性幹細胞から得るin vitroの定向分化プロトコルを紹介する。in vivoの内胚葉発生経路を模し、慎重にタイミングを計って外因性の増殖因子で処理してから、気液界面培養を行うと、密着結合を伴う分化気道上皮細胞の断片が成熟し、それが活性型のCFTR輸送機能を示した。概念実証実験として、CF患者の人工多能性幹細胞由来の上皮細胞を一般的なCFプロセシング変異を修正する低分子化合物で処理すると、成熟CFTRタンパク質の細胞膜への局在が強化された。この方法は、疾患モデルの作製およびin vitroの薬物試験に利用可能な患者特異的気道上皮細胞の作製法となる。

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