Perspective

ヒト多能性幹細胞からの原始内胚葉、中胚葉、血管内皮、および栄養膜前駆細胞の分離

Nature Biotechnology 30, 6 doi: 10.1038/nbt.2239

ヒト胚性幹細胞(hESC)から分化した最初の前駆細胞群を同定するために、我々は自己複製条件、BMP4刺激、およびレチノイン酸刺激の3つの条件で培養されたhESCの細胞表面マーカーの発現パターンを、400種類を超える抗体でスクリーニングした。その結果、30を超える細胞集団を分取し、初期発生に重要な遺伝子の発現パターンを解析することにより、4つの特徴的な前駆細胞群を同定した。自己複製条件で培養されたhESCから検出されたCXCR4+細胞を含むサブセットは、原始内胚葉に特徴的な遺伝子を発現していた。原始内胚葉でCxcr4が発現していることは、マウス胚の近位内胚葉で確認された。BMP4刺激で誘導された前駆細胞は、中胚葉、栄養芽層、および血管内皮に特徴的な遺伝子発現パターンを示し、それぞれ原腸陥入期の原始線条、絨毛膜、および尿膜前駆体に対応することが示唆された。in vitroおよびin vivoの機能解析により、ROR2+細胞が中胚葉に分化し、APA+細胞が合胞体栄養細胞を生成し、CD87+細胞が血管系に分化することが確認された。ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)の分化過程でも同様の前駆細胞群が出現する。こうした細胞表面マーカーと前駆細胞群は、ヒト組織の再生をめざした前駆細胞の精製や、多能性幹細胞の各細胞系譜への運命決定の仕組みを研究するための新しい手段を提供する。

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