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胚性幹細胞の誘導中にヒト内部細胞塊の経過を追跡する

Nature Biotechnology 30, 3 doi: 10.1038/nbt.2135

マウスの胚性幹細胞(ESC)は、in vitroでのさまざまな多能性状態がマウス胚発生の各段階に対応することが明らかにされている。ヒト細胞に関しては、ESCの完成に先立つ事象も、先行事象がin vivoの発生段階と相関するか否かも、ほとんど知られていない。今回我々は、ヒト内部細胞塊(ICM)からESCへのin vitroでの移行中に生ずる細胞および分子レベルの変化を追跡した。それにより、ヒトESCが後ICM中間体(PICMI)から生ずることが明らかにされた。PICMIという一過性の胚盤葉上層様構造は、雌細胞でX不活性化を受けており、ESCの樹立に必要十分なものである。PICMIは、in vitroの進行性で明確なICM形成の結果であって、細胞シグナル伝達の状態が特徴的であり、ESC形成能力を損なうことなく凍結保存することが可能である。ICM以上にESCに近い前駆体であるPICMIからは、ヒト幹細胞の多能性状態に関する洞察が得られる。

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