Perspective

ヒト胚性幹細胞およびヒト人工多能性
幹細胞からの前部前腸内胚葉の作製

Nature Biotechnology 29, 3 doi: 10.1038/nbt.1788

ヒト胚性幹(ES)細胞およびヒト人工多能性幹(iPS)細胞の分化誘導は、細胞系譜をin vitroで指定するためにin vivoの発生経路を再現するものであり、外来性の遺伝物質によるゲノムの変化を回避することができる。これまでは、内胚葉細胞系譜の誘導は、圧倒的に肝細胞、膵臓内分泌細胞、および腸細胞に集中していた。多能性細胞から前部前腸内胚葉(AFE)系細胞への誘導が可能となれば、細胞療法や基礎研究の有用性は、免疫機能(胸腺など)、代謝(甲状腺や副甲状腺など)、および呼吸機能(気管や肺など)に重要な組織に拡張されることになろう。多能性細胞から胚体内胚葉への指定を行って、形質転換増殖因子(TGF)βおよび骨形態形成タンパク質(BMP)のシグナル伝達を同時に阻害すると、背腹軸および前後軸に沿ってパターン形成する能力を持つAFEが極めて多くなることがわかった。今回の知見は、AFE系細胞の作製法をもたらす。

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