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ERBBファミリー依存性肺腺がんとKRAS依存性肺腺がんの経路活性化の差が腫瘍モデルキメラマウスで明らかにされた

Nature Biotechnology 28, 1 doi: 10.1038/nbt.1595

ヒトのがんの発生に関する確率論的性質を再現するため、胚性幹(ES)細胞の段階的な遺伝子操作やキメラ作製を行ってマウス腫瘍モデルを作製する方法を開発した。キメラマウスの腫瘍は、正常組織を操作した細胞に由来する。HER2(別名ERBB2)、KRAS、またはEGFRがん遺伝子を含む肺がんモデルの対立系統に生じた腺がんは、高い悪性度を示した。EGFRL858RおよびKRASG12VのキメラモデルをEGFR阻害剤で処理すると、前者ではほぼ完全な腫瘍の退縮がみられた一方、後者ではほとんど反応がなく、既報の臨床観察結果が正確に反映された。トランスクリプトーム解析および免疫組織化学的解析により、PI3K 経路の活性化がERBBファミリーの腫瘍に特有であるのに対し、KRASが原因の腫瘍にはJNK/SAP経路の活性化がみられることが明らかにされ、治療が困難なこの種の腫瘍の治療介入点を示唆している。

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