Analysis

低分子RNAのトランスフェクションは内在性マイクロRNAによる遺伝子調節全体を撹乱する

Nature Biotechnology 27, 6 doi: 10.1038/nbt.1543

低分子RNA(低分子干渉RNA(siRNA)やマイクロRNA(miRNA)など)を細胞にトランスフェクションすると、多くの遺伝子の発現が抑制されるのが一般的である。しかし、意外にも、遺伝子発現は促進される場合もある。本研究では、この上方制御が、トランスフェクションされた低分子RNAと内在性のmiRNAプールが低分子RNAを取り扱う細胞内機構をめぐって競争する「飽和効果」によるものであるのかどうかを検討した。この仮説を検証するため、我々は7種類のヒト細胞を用い、公表されている151例のトランスフェクション実験から得られた全ゲノム的な転写物の応答を分析した。その結果、内在性miRNAの標的の発現量がトランスフェクション後に有意に増大し、内在性miRNAによる抑制作用の低下と整合することがわかった。この作用には、濃度および時間への依存が認められた。miRNA部位をトランスフェクション後の遺伝子発現量の変化と関係づけることによって内在性miRNAの特性が広く推測されたことは重要である。この競争効果および飽和効果は、miRNAの標的の予測、siRNAと短鎖ヘアピンRNA(shRNA)のゲノムスクリーニングの設計、およびsiRNA治療薬に関して実用的な意義をもっている。

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