Letter

SMADシグナル伝達の二重阻害によるヒトES細胞およびiPS細胞の神経系細胞への高効率な変換

Nature Biotechnology 27, 3 doi: 10.1038/nbt.1529

ヒト胚性幹(hES)細胞の神経系細胞への誘導に用いられている現行のプロトコルは、胚様体形成、フィーダー間質細胞との共培養、または選択的生存条件に依存している。それぞれの方法には、培養条件の不定性、分化の長期化、および低収量など、問題点が多い。本論文では、2種類のSMADシグナル伝達阻害剤、NogginおよびSB431542の相乗作用があれば、接着培養系のhES細胞の80%以上が急速かつ完全に神経系細胞に変換されることを示す。経時的な運命解析により、一過性のFGF5+胚盤葉上層様の段階を経てロゼット形成能をもつPAX6+神経細胞が出現することが明らかにされた。初発細胞密度により、中枢神経系と神経堤系細胞の比が変化する。ヒト人工多能性幹(hiPS)細胞が中脳ドーパミンニューロンおよび脊髄運動ニューロンに定向分化したことから、この誘導プロトコルの確実性および汎用性が裏づけられた。NogginおよびSB431542を利用する神経系細胞の誘導により、再生医療および疾患モデリングでのhESおよびhiPS細胞の利用が促進され、フィーダー間質細胞および胚様体を利用するプロトコルは無用のものになると考えられる。

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