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炭疽菌毒素の分子間の相補性で特異性の高い腫瘍標的化を実現する

Nature Biotechnology 23, 6 doi: 10.1038/nbt1091

炭疽菌毒素防御抗原(PrAg)が形成する7量体では、致死因子(LF)の結合部位がふたつの隣接する単量体にまたがっている。このことは、分子間の相補性を介してのみ機能的なLF結合部位を生成する単量体を利用すれば、腫瘍標的化の細胞型特異性が向上する可能性があることを示唆している。本研究では、別々のLF結合サブサイトに作用する変異をもち、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の切断部位を含む変異型PrAgを作製した。LF結合に障害があるため各々の変異型PrAgは単独での毒性が低かったが、uPAおよびMMPを発現している腫瘍細胞に同時に投与すると機能的なLF結合ヘテロ7量体が形成された。相補的な変異型PrAgを2種類組み合わせるとマウスでの毒性が大幅に低下し、由来のさまざまな悪性の移植腫瘍の治療にきわめて効果的であった。今回の結果は、炭疽菌毒素、およびおそらくそのほかの多量体毒素が、複数の特異性決定因子を導入する優れた手段となり、それによって高い治療係数が実現されることを示している。

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