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シロイヌナズナのシグナル伝達要素を用いた酵母の人工的細胞間連絡

Nature Biotechnology 23, 12 doi: 10.1038/nbt1162

細胞間連絡ネットワークを人工的に構築することにより、天然のシグナル伝達経路の定量的理解は深まり、細胞集団に連携性の高い挙動をとらせることができるようになる。真核生物でこの目的を達成するため、酵母Saccharomyces cerevisiaeで人工的細胞間連絡系を2種類開発して解析を行った。我々は、シロイヌナズナArabidopsis thalianaのシグナル合成および受容体要素を、酵母の内因性タンパク質リン酸化要素および新たな応答プロモーターと組み合わせた。第1の系では、遺伝子組換え酵母「送信」細胞が植物ホルモンのサイトカイニンを合成し、それが周囲に拡散して近隣の遺伝子組換え酵母「受信」細胞のハイブリッド外因性/内因性リン酸化シグナル伝達経路を活性化させる。第2の系では、送信ネットワークを正のフィードバック制御下で受信側に組み込むと、細胞密度依存的な遺伝子発現(すなわち細胞数感知)が生じた。今回の系の実験結果と数学的モデルを総合すれば、酵母および高等真核生物のさまざまな生物工学的用途、たとえば発酵プロセスや生体材料製造、組織工学などに役立てることができる。

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