Review

新薬探索のシステム生物学

Nature Biotechnology 22, 10 doi: 10.1038/nbt1017

疾病の生物学は複雑であり、薬物開発は生物学的反応をみながら進めなければならないという現実があるため、「遺伝子から薬」を迅速に生み出す夢は潰えた。システム生物学の目的は、複雑な生物システムの働きを明かし出して理解し、最終的には人間の疾病に関する予測モデルを開発することである。ヒトの細胞と組織の機能に関して分子レベルで意味のあるモデルを構築することは遠い未来の目標であるが、新薬の探索にはすでにシステム生物学研究の影響が及んでいる。遺伝子、タンパク質、および代謝を大規模に解析すること(「オミクス」)によって、疾病モデルに関する仮説の構築や試験は劇的に加速している。器官およびシステムレベルでの反応に関する知識を統合したコンピューターシミュレーションは、標的間の優先順位づけや臨床試験の計画立案に役立っている。新規の特性を捉えるためにヒト検体の細胞を利用して構築された複雑な分析法の自動化によって、現在では、疾病に関連する膨大なヒト生物学を新薬探索プロセスと統合することが可能となり、標的および化合物の評価、リード化合物の最適化、および臨床的適応症の選択に関する情報が得られるようになっている。このようなシステム生物学的方法によって、医薬品開発で行われる意思決定は必ずや改善されるであろう。

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