Nature ダイジェスト
Nature ダイジェスト
 
2021年12月号
 
Volume 18 Number 12
21世紀末の世界人口を予測する
今世紀末、地球にどれだけの人間がいるか? 複数の研究グループが、さまざまな方法で推定を行っている。国連の研究チームの予想は110億人。一方、88億人とした論文が議論を呼んでいて、LANCETに掲載されたこの論文に、人口統計学者170人が署名付きで疑問を呈した。この数字が、なぜそれほど重要なのだろう。それは、何十年も先の「将来の」人口は、各国の「現在の」政策を左右するからだ。
 
 
今月の無料コンテンツ
Editorials
Nature ダイジェスト
 
世間の目にさらされたCOVID研究者を守れ Free access!
COVID-19パンデミックの際に忌憚なく意見を述べた研究者たちが、ハラスメントに直面している。所属機関は、こうした研究者を支援する施策の充実を図らなければならない。
 
News in Japan
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未来の博士たちによる3分間の熱闘! Free access!
博士課程の学生が、自身の研究の魅力を3分で伝える「未来博士3分間コンペティション2021」が11月3日に開催された。
 
Nature ダイジェスト
 
東京栄養サミット2021で「日本の栄養」を世界へ! Free access!
第二次世界大戦終戦前後まで、日本を悩ませた問題は「栄養の欠乏」だった。ところが、その問題は1960年代ごろから「栄養の過剰」へと急速に変化する。中村丁次氏は、この両極端な問題を解決して健康寿命の延伸を成し遂げるべく、日本で最初の栄養相談室を開設し、健康な食事を研究、指導してきた。日本の経験は、世界の栄養不良問題の解決に役立つはずだ。そう考えた中村氏は、東京栄養サミット2021に先立ち、日本の経験を科学的見地からまとめた『ジャパン・ニュートリション』を出版した。
 
News in Focus
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SARS-CoV-2感染で得た免疫は「1〜2年しか続かない」と予測結果 Free access!
マスク着用やワクチン接種などの防護策を講じない場合、初感染から17カ月後には再感染のリスクが50%に達すると、ウイルスの進化的関係に基づく推定方法により予測された。
 
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COVID回復後のワクチン接種がもたらす「スーパー免疫」の謎 Free access!
COVID-19から回復した人はその後のワクチン接種で、感染経験のない人に比べて強力な免疫を獲得することが分かってきた。これは、パンデミックを巡る大きな謎の1つとなっている。
 
Comments
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食料システム:飢餓を終わらせ、地球を守るための7つの優先課題 Free access!
世界の人々の栄養状態を改善し、環境を保護するために、国連は科学技術をどのように活用すべきか? 国連食料システムサミット2021の科学グループの委員長らによる寄稿。
 
News in Focus
2021年ノーベル医学生理学賞は感覚の生物学的基盤を発見した2人に
細胞が温度や接触を感知する仕組みを解明したデビッド・ジュリアスとアーデム・パタプティアンが、2021年のノーベル医学生理学賞を共同受賞した。
気候モデル研究者とシステム理論研究者にノーベル物理学賞
複雑系の分野で大きな業績を上げた真鍋淑郎、クラウス・ハッセルマン、ジョルジョ・パリージの3氏がノーベル物理学賞を受賞した。
ノーベル化学賞は「真にエレガントな」触媒に
安価で持続可能な触媒を開発したベンジャミン・リストとデビッド・マクミランが、2021年のノーベル化学賞を共同受賞した。
密猟がアフリカゾウの牙にもたらした遺伝的変化
モザンビークでは、牙を持たない雌のアフリカゾウが増加している。こうした傾向が、牙を持つ個体が選択的に狩られた結果であることが、その遺伝的基盤と共に示された。
レーザー核融合の新記録を米国の「国立点火施設」が達成
米国の「国立点火施設」が、レーザー核融合発生エネルギーの新記録を達成した。この成果は米国の核兵器研究にとって何を意味するのか。
+1.5℃に抑えるには、埋蔵化石燃料の採掘はもはや不可!
世界が1.5℃の温暖化抑制目標を達成しようとするなら、現在計画されている 石炭、石油、天然ガスの採掘プロジェクトの多くは、実現不可能になる。
Feature
世界人口はどこまで増える?
国連の予想によると、今世紀末には地球上には110億人近い人々がひしめくことになるという。しかし、他の人口統計学研究グループは、ピークに達する時期はもっと早く、ピークの高さももっと低いと予想している。
World View
生物学はデータだけでなく考え方も生み出さなければならない
データは、それを得ることが目的ではなく、知識を得るための手段であるべきだ。
News & Views
ヒトがアラビアを通って繰り返し分散した証拠
アラビア半島は、ヒト(現生人類に至る動物の系統)、およびヒト族の近縁種が アフリカを離れ始めたときの移動の要衝だった。考古学的証拠および当時の推定される気候から、初期人類がアラビアに居住していた時代のことが明らかになった。
ベンゼン環を選択的に開裂する
ベンゼン環は、通常の反応条件では非常に壊れにくい。今回、ベンゼン環のC–C結合を選択的に切断できる開環反応が開発され、芳香族化合物が持つ、鎖状分子合成の構成要素としての可能性が浮き彫りになった。
骨格の老化の基盤となる幹細胞
老化が骨量減少にどのように関与するのかは分かっていない。 今回、老化したマウスでは、骨格幹細胞が、 骨芽細胞と呼ばれる骨形成細胞を生み出す能力を失い、 代わりに破骨細胞と呼ばれる骨吸収細胞の生成を促進することが明らかになった。
孤独なハエに何が起こるか
キイロショウジョウバエDrosophila melanogasterは社会的動物だ。今回、キイロショウジョウバエを長期的に社会的孤立状態に置くと、睡眠と摂食パターンの調節障害が起こることが分かり、長期間にわたって社会的接触が断たれると健康にどのような影響が表れるかについての手掛かりが得られた。
Advances
昔のイヌの食生活
糞石の古DNAから進化を探る。
Where I Work
Highlights
ハイライト
2021年10/7〜10/28号
Editor's Note
先日、日本のSARS-CoV-2ワクチンの2回接種率がG7でトップになったというニュースがありました。日本の2回接種率は75.5%にも上るということです。今月号でも、ワクチン接種は再感染のリスクを下げるというメリットについて紹介しています(12ページ「SARS-CoV-2感染で得た免疫は「1〜2年しか続かない」と予測結果」)。これまでも紹介してきたように、ワクチン接種のメリットはさまざまな知見によって裏付けられていて、この高い接種率は、個人レベルでも国レベルでも将来的に大いにプラスに働くと思われます。それにしても、日本へのワクチン導入が諸外国に比べて遅かったことを考えると、接種のペースは驚異的であり、各自治体や医療従事者をはじめとする関係者の皆様の多大なるご尽力に感謝を申し上げたいと思います。日本国内のSARS-CoV-2感染者数がこの2〜3カ月で激減した要因は、まだはっきりとは明らかになっていませんが、その一因がワクチン接種の高さにあることは間違いありません。今後の研究でその他の要因についても明らかになり、今後のパンデミック対策へと生かされることを期待しています。