Review Article

がんと繊維症においてガレクチンによる制御回路を標的とする

Nature Reviews Drug Discovery 22, 4 doi: 10.1038/s41573-023-00636-2

ガレクチンは、広範な生理過程と病理過程において重要な役割を果たす内因性のグリカン結合タンパク質ファミリーである。ガレクチンファミリーは、細胞外機構と細胞内機構だけでなく、グリカン依存性経路とグリカン非依存性経路を使って、多くの種類の細胞の運命と機能を再プログラムする。ガレクチンは、組織繊維症とがんの両方において多機能的役割を果たしているため、これらの疾患の治療標的候補とされている。本論文では、ガレクチン、特にガレクチン1(GAL1)、GAL3およびGAL9について、腫瘍の進行と線維性疾患の治療法との関連性に注目し、ガレクチンを標的とする各種戦略、例えば、炭水化物の小分子阻害剤、天然多糖類とその誘導体、ペプチド、ペプチド模倣薬と生物製剤(特に、中和モノクローナル抗体と短縮ガレクチン)などを検討して、繊維症とがんの前臨床モデルにおける一連のガレクチン標的療法の作用機構、選択性と治療可能性を論じる。また、特発性肺繊維症、非アルコール性脂肪性肝炎とがんの患者に対するガレクチン阻害薬の有効性を評価するための臨床試験の結果も検討する。糖鎖生物学研究の急速な進展は、線維性炎症を緩和し、抗がん剤治療に対する抵抗性を克服するための薬剤が切実に必要とされていることと相まって、抗ガレクチン抗体を用いた治療法の臨床応用を加速させると考えられる。

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