Perspective

ベイズ的アプローチの医薬品開発への応用:好循環をスタートさせる

Nature Reviews Drug Discovery 22, 3 doi: 10.1038/s41573-023-00638-0

製薬業界とその規制にあたる世界各国の関係当局は、新しい治療薬の評価と承認のために、帰無仮説有意性検定やp値などの頻度論的な統計手法を日常的に使用してきた。しかし、臨床医薬品開発プロセスは、時の経過とともにデータが蓄積されるため、臨床試験に関する設計、分析と意思決定に既存のデータを明示的に組み込むベイズ統計学的アプローチを使用することが適切な場合がある。このアプローチが適切に使用されれば、革新的な薬剤を患者に提供するための時間とコストが大幅に削減されるだけでなく、臨床試験に参加する患者が有効性や安全性に欠ける治療レジメンにさらされないようになるという可能性がある。ベイズ法は進歩し、必要とされる計算能力を利用できるようになり、利用し得る関連性のある既存のデータの蓄積が進んだにもかかわらず、新しい治療薬の臨床開発と規制当局による審査においてベイズ法は十分に活用されていない。本論文で、我々は、医薬品開発におけるベイズ法の価値に光を当て、その適用に対する数々の障壁を論じ、それに対処するための手法を提言する。我々が目指しているのは、どの場合に既存のデータを使用するのが適切なのか、そして、そのための有効なツールとしてのベイズ法をより日常的に実行できるようにするために何をすればよいのか、という点を検討するプロセスに利害関係者を関与させることである。

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