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ウイルス感染と闘う抗体:開発戦略と進歩

Nature Reviews Drug Discovery 21, 9 doi: 10.1038/s41573-022-00495-3

モノクローナル抗体(mAb)は、高い特異性や免疫応答増強作用などの特徴を有するため、ウイルス感染に対する治療効果と予防効果が期待される薬剤として関心を集めている。さらに抗体工学的手法を用いて、エフェクター機能を強化し、mAbの半減期を延長でき、構造生物学の進歩により、ウイルスタンパク質の脆弱な部位を特定することを通じて、強力な中和mAbを選定し、最適化できるようになった。このことも、ワクチン設計に関連すると考えられる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、いくつかの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する中和mAbを開発するための幅広い取り組みを活発化させた。今では数種類のmAbが緊急使用承認を取得して、COVID-19と闘うための戦略の重要な構成要素になっただけでなく、他の感染症の治療と予防にmAbを利用する研究に弾みをつけている。本総説では、SARS-CoV-2、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、エボラウイルス(EBOV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、インフルエンザなどのウイルスを原因とする感染症に用いるためのmAbの開発につながった抗体探索と抗体改変の進歩について述べる。また、ワクチン開発において、経験的戦略から構造主導型戦略へ移行することの理論的根拠についても論じる。この構造主導型戦略は、最適な抗原候補を特定して、その抗原において抗体の標的となり得る脆弱な部位を突き止め、強い防御免疫応答を誘導することに基づいている。

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