Review Article

神経疾患におけるアストロサイトの機能と治療的価値

Nature Reviews Drug Discovery 21, 5 doi: 10.1038/s41573-022-00390-x

アストロサイトは、グリア細胞の一種で、中枢神経系に多く存在し、健康時と疾患時に多様な機能を果たしている。多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病や各種神経精神疾患など多数の疾患で、アストロサイトの機能不全が見られる。アストロサイトは、グルタミン酸とイオンのホメオスタシス、コレステロールとスフィンゴ脂質代謝を調節し、環境要因に応答し、これら全てが神経疾患に関係していると考えられている。また、アストロサイトは、著しい不均一性を示し、その原因とされるのが、中枢神経系の位置、細胞間相互作用やその他の機構によって制御される発生プログラムと刺激特異的な細胞応答である。本総説では、複数の一般的なアストロサイト制御機構とそれらが治療標的となる可能性を特に考察する。その一例が、アストロサイト代謝を変化させる薬剤とアストロサイト上に存在する輸送体と受容体を標的とする治療法である。また、遺伝子改変プロバイオティクスやグリア細胞をニューロンに転換させる治療法などの新たな発想についても論じる。さらに我々は、神経疾患においてアストロサイトとその特定の一部が果たす役割を明確に示すために用いるアストロサイトの細分類の簡潔な命名法を提案する。

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