Review Article

標的療法の回避:腫瘍細胞が標的療法に抵抗するための細胞可塑性

Nature Reviews Drug Discovery 19, 1 doi: 10.1038/s41573-019-0044-1

がん治療における標的療法の成功は、さまざまな耐性機序によって妨げられてきた。耐性を付与する遺伝的変異の獲得の他にも、薬剤耐性をもたらす可逆的機序が明らかになっている。腫瘍細胞は、細胞可塑性によって、薬剤の標的になっている経路に依存しない表現型状態に形質転換する。こうした薬剤不応性の腫瘍細胞は、細胞周期の遅い細胞で、治療中止後に薬剤感受性を回復するか、治療に対する永久的抵抗性を獲得して再発を引き起こす。細胞可塑性は、前立腺がんや肺腺がんから黒色腫や基底細胞がんに至るさまざまながんが標的療法を回避する様式であることが、ここ数年の間に明らかになった。この表現型の切り替えを制御する機構についての理解も深まり、再プログラミング因子とクロマチンリモデリングの重要な役割が判明している。腫瘍細胞の可塑性の分子基盤がさらに解明されれば、既存の抗がん治療と併用することで、より深く長期にわたる臨床反応をもたらす可能性のある新たな治療戦略に寄与する可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度