Research Highlights

遺伝子治療:送達に付き添う分子

Nature Nanotechnology 2019, 619 doi: 10.1038/s41565-019-0481-3

遺伝子治療のための非ウイルスRNAの送達は、核酸カーゴをナノ粒子に封入して行われることが多い。しかしこうしたナノ粒子を腫瘍治療に適用する場合、こうした粒子は、大き過ぎて特定の腫瘍の特徴である密度の高い腫瘍微小環境に侵入できないことがあり、また膵臓や肝臓で除去されるため、治療の有効性が低くなる。

渡邉たちは今回、正に帯電したポリリシンの伸張部とポリエチレングリコール(PEG)の2つアームからなる小さなY字型分子を設計した。この分子をマウスモデルの血流に特定の割合で注入すると、望みの一本鎖RNAや二本鎖RNAと動的平衡で結合した。そして、正電荷の数とPEGアームの長さを調整することで、イオン相互作用を介したRNAの安定化と、形成される複合体の寿命の調節が可能になった。著者たちは、こうしたシャペロンを用いて、治療用RNAを膵臓がんやグリオーマ(神経膠腫)へと効率よく送達し、RNAは腫瘍深部へと侵入していて膵臓や肝臓への蓄積が少ないことを示している。これらのがんは、腫瘍微小環境が厚かったり、大きなナノ粒子を除去する厳重な血液脳腫瘍関門が存在したりしたために、これまで標的化するのが難しかった。

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