Research Highlights

酸化グラフェン膜:光で加速されるイオン

Nature Nanotechnology 2019, 519 doi: 10.1038/s41565-019-0458-2

生物系は、光を取り入れて細胞膜を通るプロトン輸送を調節できる。過去20年の間に、プロトンや金属イオンを輸送できるとともに天然の光合成過程を模擬できる人工的な光誘起能動輸送系の作製が成功している。今回Yangたちは、酸化グラフェン膜(GOM)を通る高速イオン輸送現象について報告している。

GOMは、酸化グラフェンを真空濾過して熱アニーリングすることで作製され、試験用のデバイスは、このGOMとその両端に配置された2つの溶液槽からなっている。中心から外れた場所に光を当てると、外部電位をかけなくても光電流とイオン電流が流れた。さらに、非対称な光照射下で、10倍の濃度勾配に逆らうカチオン輸送が観測され、照射強度を増すとともに照射時間を長くするとイオン輸送を促進できることが見いだされた。しかし、GOMの一部を直接加熱するとイオン輸送が起こらなくなるので、光によって生じる熱的効果は除外される。著者たちは、光で誘起される電荷分布の再分配を妥当な機構として提案している。次に、フォトニックイオンスイッチ、フォトニックイオンダイオード、フォトニックイオントランジスターが、GOMを基に開発された。著者たちは、将来こうした基本素子が、イオンふるいや人工光合成に利用される可能性があると考えている。

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