Research Highlights

分子モーター:光だけで回る

Nature Nanotechnology 2019, 119 doi: 10.1038/s41565-018-0350-5

一般的に、フェリンガモーターなどの光で駆動される分子モーターは、光によって誘起されるステップと熱的に誘起されるステップが組み合わさって機能する。今回Gerwienたちは、そうした分子モーターとは異なり、全てのステップが光によって駆動される光駆動一方向分子モーターを実証している。

著者たちは、立体的に混み合ったスチレン断片で形成されたキラル軸にスルホキシド立体中心が結合したヘミチオインジゴ発色団を用いている。そのため、このヘミチオインジゴ発色団には、全てが室温で熱力学的に安定な、4つの異なるジアステレオ異性体が存在する。そして、単一結合の回転、二重結合の異性化、フラツイスト運動(協調した二重結合の異性化と隣接する単一結合の180°のねじれ)という光化学ステップがあることが分かった。総合すると、この分子が最初の形態に戻るには、3ステップかかる。Gerwienたちは、波長442 nmの光の定常照射下で今回のヘミチオインジゴが実際に一方向に運動し得ることを実証している。室温において、約80%の分子が循環確率約10−9で同じ方向に回転したのである。最後に、このモーターには熱的に誘起されるステップがないため、温度を下げると効率と一方向性が増大する。

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