Research Highlights

生体材料:二元機能ナノプラスター

Nature Nanotechnology 2017, 917 doi: 10.1038/nnano.2017.192

組織接着剤は、縫合糸やステープルに代わる使いやすい創傷封止材料である。組織接着剤は、使い方が簡単で、患者に外傷や痛みをほとんど与えない。さらに、実時間撮像できる可能性があり、柔らかい臓器の治療に使った場合、追跡できる。そのため、手術後の検査での治療した臓器の経過観察や、回復過程における健全性の評価が可能になる。

Shinたちは、Nature Communicationsに掲載された論文で、酸化タンタル/シリカ・コアシェルナノ粒子(TSN)でできた実時間撮像できる接着剤を提示している。著者たちは、この接着剤が2本のリボン状の子牛の肝臓を接合でき、動物モデルの肝臓の傷を閉じ得ることを示している。ナノ粒子の接着能はシェルのシリカによってもたらされ、走査型電子顕微鏡の擬似カラー画像(図示)に示されるように、肝臓に接着して肝臓のフィブリン繊維との相互作用ネットワークを形成する。実時間撮像特性は、生物学的に不活性な酸化タンタルコアに由来し、超音波スキャンやコンピューター断層撮影などのさまざまな手法を用いて、in vivoで撮像できる。

TSNの接着特性は、現在治療に使われている材料に匹敵するが、生体適合性が高く細胞毒性が低いという特徴がある。ラットに筋肉注射すると、TSNの位置はラットの生理的動態の影響を受けなかった。これは、画像誘導外科手術における固定マーカーとしてもTSNを利用できることを示唆している。原理証明として、著者たちは、ラットの肺のがん病巣を特定するマーカーとしてのTSNの可能性に関する予備データを提示している。

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