Research Highlights

アデノシン三リン酸:エネルギー源以外の役割

Nature Nanotechnology 2017, 717 doi: 10.1038/nnano.2017.145

今回、Patelたちは、アデノシン三リン酸(ATP)が、エネルギー源であるだけでなく、生物学的ヒドロトロープともなりうることを報告している。ATPは、ミリモルレベルの生理学的濃度で、タンパク質の可溶性を保ち、前もって形成されたタンパク質繊維を溶解することができるのである。この知見によって、ATPの細胞質内濃度が最大で5 mMと、マイクロモルレベルのエネルギー需要を満たすには十分すぎるほど高い理由も説明できる。

Patelたちは、精製したFUS(fused in sarcoma)やアミロイド繊維を形成しやすい2種のタンパク質によって形成された液体区画を調べて、ATPがタンパク質の可溶性を高める効果を検証している。さらに彼らは、沸騰条件下での卵白タンパク質に対するATPの安定化効果も確認している。対照実験によって、ATPのアデノシン環が、ATPの芳香環と疎水性タンパク質の結合とクラスタリングを促進して、帯電したトリポリリン酸塩部分のタンパク質安定化効果を増大させることが明らかになった。GTP、ADP、AMPにも同様の増大効果があるが、in vivoの濃度が極めて低いので、それらの効果は無視できる。生理学的濃度のATPは、試験管内で凝集すると思われる濃度を超える高いタンパク質濃度(約100 mg ml-1)を、細胞内で維持するのに役立っている。

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