Research Highlights

フラーレン:C60に倍賭け

Nature Nanotechnology 2016, 616 doi: 10.1038/nnano.2016.101

ビス付加体と呼ばれる官能基を2つ持つフラーレンの制御合成は、こうした分子を材料に利用する目的で強い関心が持たれている主題である。しかし、C60にあるほぼ同一の二重結合の数を考えると、これは取るに足りないことではない。これまでの制御合成は、共有結合したスペーサーでつなぐことしかできなかった。今回、フリードリヒ・アレクサンダー大学(ドイツ)のD Guldiとマドリード自治大学(スペイン)のT Tomásたちは、超分子誘導官能化法を考案して、位置選択性、立体選択性、アトロプ選択性を持つC60ビス付加体を作っている。

亜鉛(II)フタロシアニン(Pc)アルデヒドと、N–メチルグリシンとC60を混ぜることによって、右巻きらせん形(P)と左巻きらせん形(M)の単一ビス付加体が得られた。この制御をしないと、位置化学と立体化学が異なる付加体が最大で130種作られる可能性がある。2つのZnIIPcアーム間の非共有結合性(π–スタッキング)相互作用によって、シス形のC60付加生成物が得られた。意外なことに、テザーのない反応の収率(約1.4%)より著しく高い14%という収率で、理論的収率より2,800倍多いビス付加体が単離された。これは、フラーレンによる初のアトロプ選択的反応であり、2つのマクロ環の制限された回転に起因するアトロプ異性によって、中心性不斉、軸不斉、らせん不斉を持つフラーレン誘導体が得られる。

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