Research Highlights

紙ベースの技術:バイオセンサーと電子回路

Nature Nanotechnology 2015, 815 doi: 10.1038/nnano.2015.183

紙は、軽くて柔軟かつ安価で生物分解性があり、果実に見られる非病原性バクテリアや植物など豊富に入手できる材料から作られる。そのため、紙は診断学や電子工学における多くの応用に役立つ基盤となっている。今回、2つの研究グループが、バイオセンシング用途向けの光学特性を紙に与えられることと、紙を美術材料や包装材料の盗難防止用途向け透明電子回路に変えられることを示している。

スペイン、イラン、チェコのさまざまな研究機関に所属するA Merkoçiたちは、バクテリアセルロースの紙に金ナノ粒子、銀ナノ粒子、アップコンバージョンナノ粒子のいずれかを埋め込んで、プラズモン特性とフォトルミネセンス特性を示す紙を作り出した。金を含む紙にチオ尿素を加えると、金ナノ粒子が凝集して、紙の色が赤色から暗赤色に変わる。同様に、銀を含む紙に薬物のメチマゾールを加えると、メチマゾールを光学的に検出できた。さらに、抗体、量子ドット、グラフェン酸化物で装飾することによって、この紙を用いてバクテリアの存在が検出された。

また、華中科技大学とメリーランド大学のJ Zhouたちは、指で圧力をかけると発電する、透明な紙を用いた発電機を作り出した。この発電機は、カーボンナノチューブを含む透明な紙のシートと、ポリエチレン薄膜をさらに加えたもう1枚の同種のシートをくっつけて作られている。ポリエチレンは、エレクトレット、つまり分極した誘電体の断片である。この発電機に圧力がかかると、2枚の紙の間の空隙が狭くなるため、紙の電荷分布に差が生じ、電流が流れる。この電流を用いて液晶ディスプレイに電力が供給される。絵画や包装材料に実装すれば、この発電機を押して離すだけで、ロゴや日付などの重要な情報を表示できる。

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